火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「千寿郎くん。杏寿郎がまだ戻っていないけれど、
居間にお通ししても、いいかしら…?」
「はいっ!もちろんです!
俺、父上に声を掛けて参ります!」
千寿郎は駆け足で、家の中に戻っていった。
「ふみの様、
では只今こちらにお連れ致します」
「ええ。…少しお待たせしてしまうかもしれないから
それだけお伝えしてもらっても、いいかしら…?」
「はい。承知致しました」
「…因みにその方達のお名前は…?」
「ふく様とトミ様と、
仰っておりました」
「…“ふく”さんと、“トミ”さん…」
(初めて聞くお名前だわ…。
…杏寿郎のことも、
槇寿郎様のことも知っているなんて…。
一体、何方なのかしら…)
薫子は、ではすぐに戻りますと、
その場を後にした。
ふみのは顎に手を当て、
その場に立ったまま思い巡らせていた。
暫くして、薫子と女性二人が
煉獄家へと向かって歩いてきた。
「ふみの様。
こちらの方々です」
薫子の声にふみのは顔を上げると
そこには丸眼鏡を掛けたお下げ髪の少女と、
同じく丸眼鏡をした白髪の年配の女性が立っていた。
少女の手には
萌黄色の大きな風呂敷が握られていた。
「突然お伺いしていまい、
大変申し訳ごさいません…っ!
私、ふくと申します。
こちらは祖母のトミです。
煉獄様とお父上様に
どうしてもお礼をお伝えをしたく…、
本日はお伺いさせて頂きました。
…あの、煉獄様の…奥様で、
いらっしゃいますでしょうか…?」
「っ!??!?
い、いえっ!!私は!そのっ、えと!」
どんどん真っ赤になるふみのに
薫子は不謹慎にも、可愛らしいと思ってしまった。
「あっ!すみません!!
私、ずけずけとっ!!」
「い、いえ…っ!大丈夫です!
私は一ノ宮ふみのと申します。
あの…、いらして頂いて
大変申し訳ないのですが、
杏寿郎は生憎出ていて…。
もし宜しければ、
中でお待ちいただくことは
可能でしょうか…?」
「そんな!ふみの様!
こちらが勝手に
お伺いしてしまっているので…っ!
かえって申し訳ありません…。
突然の訪問なのにも関わらず、
本当にありがとうございます…っ」