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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第20章 お見舞いと花束




「…!! 苺…っ!」

宝石のように輝く真っ赤な苺から
甘酸っぱい香りが台所にふわりと広がった。

「…苺、苦手?」

「いいえっ!大好きです…っ!
 ありがとうござい…」

「…ねえ」

「あ、はいっ!」

「敬語に、なってるけど」

「あ…っ、すみませ…っ、ではなく…」

無一郎は焦るふみのじっと見つめると、
とことこと目の前まで歩いてきた。

「…腕…、動かせないんでしょ?」

「……はい…、でも左手はっ…、」

「それ、僕が持つ」

「だ、大丈夫ですよ!
 お気遣いありが…」

「いいから貸して?」

そう言って、無一郎は桜餅が乗った盆を
さっと持っていってしまった。


「・・・」

(…ど、どうしよう、
 全然…話しができない…っ)


一人台所に取り残されたふみのは
ぱちぱちと瞬きを繰り返すと、
無一郎の後を追った。



蜜璃が持ってきてくれた桜餅は
今まで食べた中で一番美味しかった。

餡の甘さが程よく、
桜の香りが口いっぱいに広がってゆく。

今度はもっと沢っ山買ってきますね!と
やる気満々に意気込む蜜璃に、
ふみのはありがとうと微笑んだ。

えへへと照れる蜜璃を
小芭内も穏やかに見つめていた。

無一郎は、然程話しはしなかったが、
皆の会話を静かに聞いている様子に、
ふみのはやはり健一郎と重ねてしまい、
当時の事を思い出し、懐かしい気持ちに浸っていた。


「…そうしたら、そろそろお暇しますね!
 煉獄さんには会えないのが残念ですが…っ」

「杏寿郎にも、皆さんがいらしてくださったこと、
 お伝えしますね。
 本当に、今日はありがとうございました」

「…煉獄にも宜しく伝えてくれ」

「はい!申し伝えます」

「あのっ、ふみのさんっ!!
 また、お伺いしてもいいですか!?
 ふみのさんと煉獄さんが一緒にいるところを
 早く見たいんですぅ〜〜っ!」

「〜〜〜〜〜…っ!?」

ふみのさんと煉獄さんが私の憧れなんですっ!と
胸をときめかせている蜜璃に、
ふみのは真っ赤に顔を染めていた。


ふみのと千寿郎は
三人を門の外まで見送った。

「では!失礼しますっ!
 突然お邪魔してしまって、
 すみませんでした…っ」

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