火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「…俺もそのままで構わない」
小芭内もそう言いながら腕を組み、
外方を向いていた。
「…は、はい!
ありがとうございます…っ。
…はっ!すみません!こんな場所で…!
もしお時間あれば、
お茶でもいかがですか…??」
「えっ!!嬉しいです!!
いいんですかっ!?」
「ええ、もちろん!
その桜餅を皆さんで頂きましょう?」
「きゃ〜〜〜!!!
ありがとうございます!!ふみのさんっ!!」
ふみのは三人を連れて、
家の居間へと案内した。
「…煉獄はいないのか」
小芭内が目だけを動かし、
辺りを見回している。
「そうなんです。
しのぶさんのところに診察に行くと言って…」
「あれっ、でもしのぶちゃん、
行かなきゃいけないところがあるって
昨日、蝶屋敷を出ていて…」
「…!あら、そうなのね…!」
「あっ、じゃあ、アレかなっ!?
予定が急遽変更になったのかしら…!?」
あたふたとする蜜璃を前に、
杏寿郎は一体どこに行っているのだろうと
ふみのは思い巡らしていた。
すると、
千寿郎が居間に茶を運んできてくれた。
「すみません、お待たせ致しました…!
甘露寺さん、貴重な和菓子を
ありがとうございます。
今、用意して参りますね!」
「千寿郎くん、私がやるから座ってて?」
「いえっ、でもふみのお姉様…っ」
ふみのは千寿郎に、大丈夫よと声を掛けて、
台所に向かった。
台所で、桜餅を皿に移していると、
人の気配を感じ、ふみのはくるりと後ろを向いた。
「千寿郎くん、今持っ…、
!! …時透さん…っ!
そこにいたのは、無一郎だった。
(…やっぱり、
健一郎に目元がそっくり…)
ふみのはじっと無一郎を見ていたことに気づき、
はっと我に返った。
「すみませんっ、今お持ちしま…」
「ねえ、これ」
「…??」
無一郎は隊服の袖に隠れていた布の包みを
ふみのに差し出した。
「…? これは…??」
「お見舞いって聞いたから。
…大したものじゃないけど」
「…! お気遣い頂き、
ありがとうございます…!
…開けてみても、良いですか…?」
無一郎がこくんと頷くと、
ふみのは包みの結び目をそっと解いた。