火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
小芭内がすかさず、
手ぬぐいをさっと蜜璃に手渡した。
「甘露寺、これを使え」
「い、伊黒さん…っ、
本当にいいの…?」
「ああ、構わん」
小芭内を見つめる蜜璃の瞳が
眩しいくらいにきらきらと輝いて見える。
隣に立っている無一郎も
ぽかんとした表情でその様子を見つめていた。
(……!
蜜璃ちゃんって、もしかして
伊黒様のこと…っ!)
そんなことを思っていると、
蜜璃はくるっとふみのに向き、
手提げの中にあった包みを
誇らし気に差し出した。
「ふみのさんっ!これ!
ほんの少しですが、食べてくださいっ!
最近できた甘味処の桜餅なんです!
人気ですぐに売り切れちゃうんですが、
今日は朝一番に並んで
初めて購入できたんですっ!!」
「え…!そんな貴重なものを、
受け取ってしまっていいの…?
蜜璃ちゃんの分は…?」
「私は良いんですっ!
また行けばいいですもの!」
私の目に間違いはないですっ!と
ぐっと拳を握りしめ自信満々に話す蜜璃。
ふみのはちらりと小芭内を見ると、
包帯で巻かれたその口元が
僅かに綻んだように見えた。
「…まぁ、一番最初に並んだのは
鏑丸だがな」
「や、やだっ!い、伊黒さんったら…!!
それは内緒にしてくださいって
言ったじゃないですかあっ!」
「はは、すまんすまん」
まるで初々しい恋人同士のような二人のやりとりに
こちらが恥ずかしくなってしまう。
「…鏑丸さん…とは、
何方なんですか?」
ふみのが二人を見つめていると、
小芭内の首元から白い蛇がにょろりと顔を見せた。
「…鏑丸だ」
「わぁ…!綺麗な蛇さんですね…!
鏑丸さん、一番に並んでくれてありがとう」
鏑丸はちらりとふみのを見ると
照れたようにまたしゅるっと
小芭内の首元に隠れてしまった。
「そう!!それで街を歩いていたら、
時透くんに偶然会って!
煉獄さんのお家に行かない?って
お誘いしたんです!」
「…!」
ふみのは無一郎を見るが、
その表情は殆ど変わらない。
でも見れば見るほど、その垂れた目元が
弟の健一郎を思い出してしまう。
「と、時透様、
お忙しいところ、わざわざ…」
「…ねえ、僕より年上でしょ。
呼び捨てでいいよ」
「えっ、でも…」