火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
杏寿郎を見送った後、二人は家の中に入った。
千寿郎もにこにこと
嬉しそうな顔をふみのに向ける。
「兄上はきっと、
ふみのお姉様の喜ぶことを
お考えなんだと思いますよ!」
「! そうなのかしら…。
杏寿郎、なんだかとっても楽しそうだったわね!」
「ええ、本当に!
あ!俺は昼の支度をしてきますので、
ふみのお姉様は
休憩なさっていてください!」
「っえ、でも、」
「大丈夫ですよ!
たくさん手伝っていただき、
ありがとうございます!
後で、お茶もお持ちしますね!」
千寿郎はにっこり笑い、
台所へと駆けて行った。
ふみのは陽の当たる縁側に腰を下ろした。
青空に綿雲がふわりと浮き、
暖かい日差しが庭に降り注ぐ。
庭先の枝に留まるふみのの鴉・杲も
気持ち良さそうにうたた寝をしていた。
久しぶりに眺める景色なのに、
つい昨日までここに居たような、
不思議な気分にふみのは浸っていた。
ほんとうに、いい天気…!
するりと頬を撫でる穏やかな風に目を瞑る。
わさわさと揺れる木々の音が、心地よい。
すると、門の方で誰かの話し声が聞こえてきた。
(…? 誰だろう…)
ふみのは立ち上がり、門のところまで行くと、
そこにいたのは、蜜璃と蛇柱・伊黒小芭内、
霞柱・時透無一郎だった。
「蜜璃ちゃん…っ!!
伊黒様、時透様も…っ!」
「!!! ひぇっ…!?
ふみのさああんんっっ!!」
蜜璃の顔が瞬く間に、
涙と鼻水でぐしょぐしょになる。
蜜璃はふみのに抱きつくと、
大声で泣いていた。
「うわ〜〜〜〜んんんっ!!
とっっっっても、
会いたかったですぅ〜〜…っ!!!」
「蜜璃ちゃん…!
たくさん心配掛けて…、
本当にごめんね…っ」
ふみのが蜜璃の背中をさすると、
ぶんぶんと頭を左右に揺すった。
「いえ…っ、
こうやってふみのさんに会えて、
煉獄さんと…一緒にいるのだと思うと、
もうそれだけで、とっても嬉しくて…っ!」
蜜璃の想いに、ふみのの目頭も熱くなる。
ふみのは蜜璃の目を見てにっこり笑った。
目が腫れてしまうわと、ふみのは
懐に入れてあった綿の手ぬぐいを
取り出そうとした、その時。