火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
自分のことを気遣ってくれる
千寿郎の姿が、杏寿郎と重なる。
二人は心優しい素敵な兄弟なのだなと、
ふみのの心がほっこりと和んだ。
「ふみの!」
「!」
ふみのがくるりと後ろを向くと、
縁側の廊下に、紺色の羽織を纏った
着流し姿の杏寿郎が立っていた。
「杏寿郎のお着物の色、素敵ね。
とっても似合ってるわ」
「以前、父上が着ていたものを拝借させて貰ってな。
そう言ってもらえて良かった!」
「槇寿郎様のなのね!
…あれ、どこかに出かけるの?」
「! あ、ああ!胡蝶のところに行ってくる!
念の為、最後の診察をしておきたいとのことだ!」
ふみのは、あ、と小さく声を上げた。
「…そうしたら、明日の予定だったけど、
私も一緒に行って診てもらおうかな!」
するとふみののその言葉を聞いた途端、
杏寿郎の肩がびくっと揺れた。
「…っそ、その!胡蝶だが、
今日は余り時間がないと、話していたな!
何か、急ぎの用があるらしい!!」
ふみのから視線を逸らし、
杏寿郎は溌剌とした態度で遠くを見ている。
その様子に、ふみのの目がまん丸になる。
「そ、そうなのね…!
じゃあ、私は予定通り、
明日、行くことにするわ…っ!」
「う、うむ!そうだな!」
(兄上は本当に嘘が付けない方だな…)
どこかぎこちない杏寿郎を見て、
千寿郎はくすっと笑った。
「ふみのっ!!!」
「っひゃ!?」
突然大声で名前を呼ばれて、
ふみのはまたもや目を見開いた。
「ふみのの好みの色を
教えて欲しい!!!」
「こ、好みの色…??」
「うむ!!」
「…えっと…、そうねえ…、」
うーんと顎に手をついて考えるふみのを
杏寿郎は緊張しながらその返答を待っていた。
「……白、かな…?」
「!! そうか!!良い色だな!!」
「う、うん!」
ふみのの脳内に疑問符が溢れるが、
これ以上は何も聞かないようにしようと
ふみのは思わず緩んでしまう口元を手で覆った。
「では、出かけてくる!」
「兄上、お気をつけて!」
「しのぶさんに、よろしくね」
杏寿郎は門の外で手を振ると、
颯爽と歩いて行った。