火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
あの時はその意味が分からずに
瑠火の話しに耳を傾けていたが
今なら分かる。
誰かを 心から想い
愛せる幸せと歓びが
何にも代えられない
強さになっていく─────
「杏寿郎…?」
抱きしめられたまま微動だにしない杏寿郎を
ふみのは心配そうに見つめた。
「…大丈夫?何か…考え事?」
「いや、大丈夫だ。
今日は疲れたろう。
ゆっくり休むといい」
「うん…、でも、本当に平気…?」
それでも尚、
心配そうに杏寿郎を見るふみの。
その両頬を杏寿郎は包むと、
ふみのに顔を近づけた。
「! …っん」
そっと互いの口唇が重なった。
優しい口付けに、ふみのは瞼を閉じた。
名残惜しくも、静かにその唇が離れると、
杏寿郎の額がこつんとふみのの額に触れた。
ふみのの頬がじんわりと赤らむ。
「ふみのが…隣にいるのだな。
…すまない。嬉しくて、思い耽っていた」
「もう…どうしたのかと、
心配しちゃったわ」
「それはすまなかった」
ふみのはむうっと頬を膨らませ、
杏寿郎はその姿に眉尻を下げ、目を細めた。
ふみのはその優しい眼差しを見つめたまま、
そっと杏寿郎の頬を撫でた。
「…私はずぅっと、
杏寿郎と一緒よ?」
「ああ、そうだな。
ずっと…一緒だ」
微笑み合う二人を包む
やわらかく、甘いひととき。
最後にもう一度、杏寿郎はふみのに口付け、
二人はそれぞれの部屋で床に就いた。
翌朝、帯金庄衛の鎹鴉・作(つぐる)より、
日輪刀の原料となる鋼が
無事に手に入ったとの文が届いた。
ふみのが文を読んでいると
作が「イツデモ来テ良イ!」と話してくれた。
ふみのは杏寿郎にもその旨を伝え、
明後日に里に出向くと返事を書き、
作るはその返信を咥えると「デハ!里デ待ッテイル!」と
空高く飛んでいった。
ふみのは里へ向かう支度も進めつつ、
千寿郎と庭で洗濯物を干していた。
「千寿郎くん、これで全部?」
「はい!
すみません、手伝っていただいて…。
お身体は大丈夫ですか?」
「うん!お陰様で大分いいみたい」
「それは良かった…!
でも無理はなさらないでくださいね!」
「うん…!ありがとう」