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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第20章 お見舞いと花束




ふみのは部屋の隅に置いてあった
風呂敷を丁寧に解いた。

「…これを最後に、飾ろうとしていたの」

「…!」

風呂敷に包まれていたのは、
ふみのが大切にしていた“海の絵”だった。

杏寿郎がそっと絵を持ち上げ、壁へと飾った。

「前と同じ場所でいいか?」

「うん!ありがとう。

 杏寿郎から貰った額、
 とってもお気に入りなの」

濃紺の木枠が、海の群青色を
より一層引き立てている。

「気に入って貰えて何よりだ。
 …今にも、波の音が聴こえてきそうだな」

「うん、ほんとね…!」


目を閉じれば、
今でも鮮明に蘇る、
水面の青い輝き。

足元をすり抜けていく、
ひんやりと透き通る潮騒。

鳶が水平線へと、
澄んだ声を響き渡らせる。


「ふみの」

「んっ?」


目を開けると、
杏寿郎とふみのの瞳が交わった。


「初めてこの絵をふみのと見て、
 …俺は思ったんだ」

「…?」


杏寿郎はふみのを見つめたまま、
ぎゅっとその手を握ってくれた。


「いつか必ず、
 ふみのを
 此処へ連れて行く」

「…!」

「あと…少しずつでいい。

 俺がまだ知らない
 ふみのの思い出も、
 沢山聞かせて欲しい」


そう言ってやさしく笑う杏寿郎に
ふみのは目を細めた。

「うん…!ありがとう。
 とっても…嬉しいわ。

 私、一生懸命頑張りたい。
 今、出来ることを…少しずつ」

「ああ、俺ももっと、強くなる。
 …ふみのを守れるように」

「私もよ。
 杏寿郎を守れるように、
 もっと、強くなりたい」

杏寿郎がふみのの腕を優しく引き、
そっと抱きしめた。

「ふみのが傍にいると、
 不思議と…力が湧いてくる」

「うん、私も。
 杏寿郎といるとね、
 勇気が、湧いてくるの」

ふみのも杏寿郎の背中に手を回した。


大切な人がいて、

そして護りたいと思う心が

こんなにも人を強く漲らせる。


杏寿郎はより一層力を込めて、
ふみのを抱きしめた。



そしてふと、
杏寿郎の脳裏に
懐かしい瑠火の言葉が響く。



『杏寿郎。

 いつか貴方の前に現れる
 心から愛する人を

 守っていくのです───…』



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