火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
ふみのの顔がみるみるうちに赤く染まるも、
杏寿郎は、何食わぬ顔でふみのを見つめている。
「では、胡蝶!これにて失礼する!」
杏寿郎はしのぶに溌剌と言い切ると、
ふみのの手を取って診察室を出ていった。
ふみのは照れながらも、
ぺこぺこと何度もしのぶに頭を下げた。
(ふふっ、いつも通りのお二人に戻って、
本当によかった)
玄関に向かう二人の背中を
しのぶは笑顔で見送った。
ふみのと杏寿郎が屋敷に到着すると、
薫子と他数名の隠達がおり、
既にふみのの荷物を
煉獄家に運び出してくれていた。
「ふみの様。
お帰りなさいませ。
診察は…大丈夫でしたか?」
「ええ、あとは少しずつ
様子を見ていきましょうって。
心配してくれてありがとう」
「そうですか…。
もし何かあれば
私も診察にご一緒しますので。
何でも気兼ねなく仰ってください。
それと、ふみの様のお荷物は
既に煉獄家にお届けしております」
「薫子さん…!
何から何まで、本当にありがとう。
他の隠の皆さんにも感謝しています」
ふみのが礼を伝えると、
他の隠も揃って頭を下げた。
「ではまた、何かあれば煉獄家にお伺い致します。
刀鍛冶の里に行かれる際も
途中までは私がご案内致しますので」
「ありがとう薫子さん、
また当日、宜しくお願いします」
「藤崎少女、色々と手を煩わせてすまなかった。
本当に感謝している。また宜しく頼む」
「いえ、滅相もございません。
では私達はこれで」
「あ、薫子さん!待って!」
くるりと向きを変えた薫子の隊服の袖を
ふみのがきゅっと掴んだ。
「? 何でしょうか…?」
「あのっ、薫子さんの
一番好きな料理を教えてくれる?
里に行く前に、何かご馳走をしたくて…!」
薫子はふみのの問いに目をまん丸にさせ、
少し考えたあとに、恥ずかしそうに、
でも嬉しそうにそっと答えてくれた。
「……えと、…南瓜の、煮付けです」
「! 私も南瓜の煮付け、大好きなの!
作るときは薫子さんに連絡するわね!」
ふみのから感じる
本当の姉のようなあたたかさに
薫子の目頭が熱くなる。