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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第20章 お見舞いと花束




「ふみの、俺が用意をしてくる。
 藤崎少女と待っていてくれ」

「ううん、大丈夫よ?
 杏寿郎もお客様なんだから!」

「ふみの、頼む、
 このぐらいはさせてくれないか?」

「…そう?
 じゃあ、お願いしちゃおうかなっ」

薫子は二人の和やかなやりとりを
じっと眺めていた。


(……。
 …こんなにも嬉しそうなふみの様、
 初めて見たかもしれない…)


「お二人は…本当に、
 相思相愛なのですね」


ぽつりと呟く薫子は
少し悔しそうに笑った。


「…私…、今までずっと、
 …炎柱様のことを、
 ……羨ましいと、思っておりました」

「「…!」」


杏寿郎は驚き、薫子を見つめる。
薫子は決して許されることではないと思うも、
正直にありのままを述べた。

「炎柱様に初めてお会いした時、
 その時もふみの様のことを
 凄く気に掛けていらっしゃって…。

 心から大切に想われる方を、
 …ふみの様のことを、
 自らのお力で守ろうとされるそのお姿に
 真の強さを…感じております。
 
 …私はこの通り、隠の身です。
 出来ることも…限られます。

 …私にも、
 自分自身の力で刀を振り翳し、
 誰かを守り抜ける強さが、
 あったらいいのにと、
 …そう、思ってしまって」

薫子の声が小さくなり、
語尾が震えていた。

杏寿郎は薫子の前に膝を付くと、
その肩に手を置いた。


「俺は、力があるだけが
 本当の強さとは思わない」


薫子はその言葉に杏寿郎を見つめ、
瞳を大きく見開いた。


「誰しも、恐れに立ち向かうことは
 決して容易ではない。…恐怖そのものだ。

 しかし、如何なる時でも、
 自分よりも大切な誰かを
 守りたいと、そう思う心こそが
 “本当の強さ”では、ないだろうか。

 藤崎少女は既に、
 その強さを持っていると、俺は思うがな」


薫子は静かに、涙を流していた。


「…私は…っ、
 …ふみの様を、
 お守り出来なかったんです…っ」


薫子の頬に大粒の涙が伝う。
ふみのは薫子の前にしゃがみ、
その顔を覗き込んだ。


「薫子さん…っ。
 決してそんなことはないわ!!
 それにいつも薫子さんの言いつけを
 守っていなかったのは私よ。
 …たくさん迷惑を掛けしまって…」


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