火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「「・・・?」」
一体何が起こっているのか、
ふみのと杏寿郎は全く分からなかった。
薫子はその場に正座をし、
手をついて何度も二人に謝罪を述べた。
ふみのは薫子に駆け寄るも、
なかなかその頭を上げようとしない。
「薫子さん、お願い。顔をあげて?」
ふみのが何度かそう言うと、
薫子は漸く顔を上げて、
申し訳なさそうにふみのと杏寿郎を見た。
「…大変、申し訳ありません。
そ、その、お二人の、…ね、願い事を、
えと、先程、聞いて…しまって…」
「……願い事??
…ああ!杏寿郎が、刀鍛冶の里に
一緒に行こうって誘ってくれたことね!」
「あっ、えとっ、その前の…っ」
「成程!そのことか!
それならば、何も気に病む必要はない!」
「えっ、あの、ですからっ」
「薫子さん、何だか気を遣わせてしまったみたいで、
ごめんなさい…。
この後、薫子さんにも相談しようと思っていたの」
「・・・」
(…どうしよう、伝わらない…っっ!
お二人に流されてしまっている…っ)
薫子は先刻から立ち聞きしてしまった
“湯浴みでの願い事”のことを詫びたいのに、
杏寿郎がふみのに話した
“刀鍛冶の里へ誘った願い事”とが
混在してしまっているのだ。
話しが全く噛み合わないことに
薫子の背筋に冷や汗が伝う。
(…柱であるお二人の秘密を聞くなど言語道断…!!
これは断じて許されることではないわ…っ!)
みるみるうちに、薫子の顔が赤く染まる。
ふみのと杏寿郎はその様子に
きょとんと顔を見合わせる。
(…薫子さんをこんなにも
追い詰めてしまう願い事だったかしら…?)
ふみのは心配そうに薫子を見つめた。
「薫子さん、本当に大丈夫…?
連日、私の看病をしてくれていたから、
疲れが出ているのかもしれないわ…っ」
「うむ。念の為、胡蝶に
診てもらった方がいいやもしれん。
今から一緒に蝶屋敷に…」
「い、いえ!それには及びませんっ!!
大丈夫です!ご、ご心配をお掛けしてしまい…、
申し訳ありませんでした…っ」
「そう…?
でも何かあったらすぐに言ってね、薫子さん。
そうだ、今お茶を淹れてくるわね!」
少し待っててねと
ふみのは薫子ににっこりと微笑んだ。