火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「ふみの。
俺からも一つ、ふみのに願い事があるのだが…。
聞いて貰えるだろうか」
「ん?」
ふみのと杏寿郎は朝餉を終え、
そのまま縁側に腰掛けて、茶を啜っていた。
その問いかけに、
ふみのは杏寿郎を見つめた。
「もう暫くしたら、日輪刀を直しに
刀鍛冶の里に行こうと思う。
ふみのが良ければ
同行して貰いたいと思っているのだが」
「…刀鍛冶の、里…?」
ふみのの脳内にその文字が並ぶと同時に、
“帯金庄衛(おびがねしょうえい)”──ふみのの日輪刀を創った──が思い起こされた。
「…! 帯金様…!」
「ああ。帯金殿にも会えれば、
ふみのが聞いた呼吸の声の意味も、
そして今まで起こった事についても
何か詳細が分かるやもしれん」
ふみのは自分の手元に視線を戻すと、
杏寿郎にも伝えた自分の思いが湧き上がってきた。
また刀を 握りたい
光の呼吸のことを ちゃんと知りたい
ふみのは、杏寿郎を見ると大きく頷いた。
「うん、私も一緒に里に行ってみたい。
帯金様に会えたら、
今までのことを話してみようと思う。
刀も、直してもらえるか文を出してみるわ」
「うむ。では共にその許可が出たら、
向かうとしよう」
「うん!」
ふみのは自分が伝えた剣士としての今後の意思を、
杏寿郎が汲み取ってくれていたことが嬉しかった。
「杏寿郎、ありがとう。
きっとひとりのままだったら、
このまま挫けていたと思う…」
「俺がそうしたいと思ったまでだ。
何があっても、俺はふみのを守り支える」
杏寿郎は膝に置かれたふみのの右手を握った。
動かすことは叶わなくても、
杏寿郎の体温がじんわりと伝わってくる。
ふみのは自分の左手を杏寿郎の手に重ねた。
「ありがとう。
私も、少しずつ、頑張るわ」
「ああ。
これからも共に、生きていこう」
「うん…!」
「っふみの様…!!」
突然、玄関の方から薫子が走ってきた。
少々顔色が青ざめている。
「藤崎少女!顔色があまり良くないな!」
「か、薫子さん…!大丈夫…?!
少し横になった方がい…っ」
「った、大変申し訳ございません!!!」