火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*
その後、朝餉にて────
二人は、炊いた白米で結ったおむすびを
縁側に腰掛け食べていた。
ふと、杏寿郎の手が止まり、
ある一点を見つめると、
ふみのの方に顔を向けた。
「ふみの」
「ん?なあに?」
「…先刻の願い事を、覚えているか?」
「…願い事?
あの、…ゆ、湯浴みの時の?」
「ああ、…け、決して見てはいないが、
ふみのは…その、前を…向いたな」
「!!!
そ、そうね!確かに向いたわ!
しかも私から!!」
見つめ合う二人の顔がどんどん紅潮してゆく。
「で、でも決して“前”は見ていないぞ!!
ふみのの顔しか見ていなかった!!」
必死になって話す杏寿郎に
ふみのは思わず吹き出してしまった。
「杏寿郎って…素直で、本当に素敵なひとね」
「そうか?
俺はふみの以上に、可憐で美しく
心優しい女性を見たことがないな!」
「〜〜〜…っ!!」
(…褒め返されちゃた…。
本当に、杏寿郎には敵わないわ…)
嬉しそうにおむすびを頬張る杏寿郎を見て、
ふみのは穏やかな気持ちに包まれた。
そして…
ふみのの様子を見に来た薫子が
屋敷の玄関先で蹲り、顔を真っ赤にしていた。
杏寿郎がいたので、
邪魔をしては良くないと思い、
声を掛けそびれてしまったのだ。
(私…、お二人の…、柱同士の内密なお話を
聞いてしまった…っ!?
こ、これってもしかして、
隊律違反に当たるの…?!
で、でもまず、ちゃんと謝るべきよね!!
声を掛けそびれてしまったと!!
・・・え、でもそしたら、
もしかして今までの全部聞いてたの!?って
なってしまうよね…??
うわーんっ!!どうしたらいいの…っ!?)
薫子は、ぶるぶると半泣きになりながら
頭を抱えていた。