火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*
杏寿郎の目線は傷跡に向けられており、
ふみのはそのまま静かに杏寿郎を見つめていた。
「鬼を斬る為に、…俺の為に、」
言葉に詰まる杏寿郎に、
ふみのは体ごと、ゆっくりと振り返った。
ちゃぷんと湯が波立ち、
ふみのは片手で杏寿郎の頬を包んだ。
「…この傷を見て、私はこう思うの。
私は、杏寿郎を守ったんだって。
今、杏寿郎とこうやって、
また一緒の時間を過ごせてる。
このしるしが、そう教えてくれているような、気がして。
…、ね?」
ふみのは傷をちらりと見て
杏寿郎へと幸せそうに微笑んだ。
杏寿郎は熱くなる目頭を堪えながら
ふみのを引き寄せ、ぎゅっと強く抱きしめた。
「…ありがとう、ふみの。
何度も、…伝えてしまう、」
「ん?」
「愛している」
そう伝えてくれる度に
ふみのの心に溢れる杏寿郎への想いも
より一層深くなってゆく。
「ふふっ、うん…!
私も杏寿郎のこと、愛してる」
二人は顔を合わせて微笑んだ。
そして、その口元が重なる。
ふみのと杏寿郎の愛の絆が再び繋がり、
それは以前よりも増して強くなった。
眩しすぎるくらいの朝陽が、屋敷に降り注ぐ。
二人は夢にまでみたこの幸せを噛み締めていた。