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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*




「駄目か?」

にやりとしながら、
ぐいっとふみのに顔を近づける杏寿郎に
もうふみのは引き下がれなかった。

「…わ、分かったわ!
 湯浴み、するわ!一緒に!
 でも一つだけ、お願い事をしてもいい…?」

「・・・願い事?」
























「願い事とは、これだけでいいのか?」

「う、うんっ!」

あたたかい湯が張った湯船に
杏寿郎がふみのの背後から抱きしめるように浸かっていた。
ふみのは木綿の布を何故か用心深く
体に二重に巻きつけていた。

ふみのの願い事とは、
『“前”は(見ては)だめ!』とのことだった。

どんな願い事をされるのかと
そわそわしていた杏寿郎だったが、
それを聞いた途端、思わず吹き出してしまい、
ふみのは赤らめた頬をむっと膨らませていた。


「ふみの、
 俺にもたれて構わない」

「う、うん!ありがとう」

ふみのがゆっくり背中を倒すと、
杏寿郎の胸板にさらにぴたりとくっついた。
熱い湯のせいもあるのか、背中と体が酷く熱い。

杏寿郎はふみのを抱く腕に
さらにぎゅっと力を込めた。


(明るいだけで、
 こんなにも緊張してしまうなんて…っ)

ふみのの胸元の前で交差する
杏寿郎の逞しい腕を見ているだけで、
その鼓動がばくばくと鳴る。
夜の交わりとは全く別物だと、
ふみのは思った。


(こんな細い身体で、
 刀を握っているとはな…)

明るい場所で見るふみのの華奢な体付きに
杏寿郎は改めて驚愕する。

ふみのの白いうなじに
杏寿郎は這うように口付けを落とした。

「…っひゃ」

ふみのは咄嗟に出てしまった自分の声に、
口元を手で覆う。

「ふみの、何故隠す?」

「だ、だって、恥ずかし…っ、ん、」

杏寿郎がそのまま肩へと唇を這わせ、
右肩に掛かる緩く束ねられた髪にそっと口付けをした。

柔らかい髪の隙間から見える
まだ痛々しくも赤く腫れる傷跡。

ふみのの右肩の傷は、
紅い三日月のように跡を残していた。

杏寿郎はその傷跡を見て、黙り込んでしまった。

「…杏寿郎?」

浴室が急に静まり返り、
ふみのはそっと振り向いて杏寿郎を見た。

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