火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*
「日輪刀が、…光の呼吸が、伝えてくれたの。
『目の前の 闇に 惑わされるな
希(まれ)を 望みを 切り拓け』って。
光の呼吸が、何を伝えようとしているのか、
全部を理解できたわけじゃないけど、
…この右腕が…まだ少しでも動くなら、
刀を握れるように、なりたいの。
…自分の事も、光の呼吸も、信じていきたい。
この命がある限り、私の使命を、果たしたい」
ふみのから湧き漲る意思は希望そのもので、
それは杏寿郎をも奮い立たせるかのようだった。
失ったものは、決して元には戻らない。
けれどそこに囚われ続けるのではなく、
その先を見据え、自らの思いに突き進む姿に
杏寿郎は心揺さぶられた。
「ふみの、少しずつでいい。
俺も全力でふみのを支える。
でもくれぐれも…っ」
そう杏寿郎が言いかけると、
ふみのが小さく笑い、
その手が杏寿郎の口元に当てられた。
「…“無理はするな”、でしょ?
いつも私の心配をしてくれて…ありがとう」
ふみのは嬉しそうに微笑むと、
つられるように、杏寿郎にも笑みが溢れた。
「…ふみのには、敵わないな」
「ふふっ、…あ、お腹すいちゃったよね。
湯浴みの支度をするから
先に温まってきて?
その間に朝食を準備しておくから」
「湯浴みの用意は俺がする。
ふみのはまだ休んでいるといい」
「ありがとう。じゃあ…お願いしちゃおうかな」
「…ふみのは入らないのか?」
「私は杏寿郎の後でいいよ!」
「・・・」
「…?どうしたの?」
「その、だな」
「う、うん」
ふみのは何となく、
杏寿郎が言わんとしていることがわかってしまった。
ふみのの顔が瞬く間に赤くなっていく。
「…一緒に、湯浴みを、しないか?」
「!!!」
ふみのの予想が的中した。
耳元までじんじんと熱くなるのが分かった。
「…え、えと、その…っ、
でも、そんなに湯船も、大きくないし、」
「嫌か?」
「そんな!嫌じゃ、ないけど!
…は、恥ずかしいなって…」
「目合いをしていてもか?」
「そ、それとこれは、
違う、気がして、その…っ」
しどろもどろしてしまうふみのを見て
杏寿郎はその姿さえ可愛らしくて堪らないのだ。