火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*
(…、あれ…昨日、私…、)
どうやらその事後のあと、
ふみのは気付かぬ間に
眠りに落ちてしまったらしい。
昨夜の出来事を思い出し、
ふみのは顔が熱くなった。
(……あれ…?)
いつもより、体が温かい。
ふと視線を落とすと、
ふみのは杏寿郎の腕に包まれていた。
二人とも浴衣を緩く身に纏っている。
(もしかして…、
ずっと…抱きしめてくれていたのかな…)
ふみのは手を伸ばし、
杏寿郎の頬に掛かる焔色の髪をそっと梳いた。
(本当に、綺麗な髪…)
見惚れるように、
ふみのは杏寿郎の寝顔を見つめた。
煉獄家で共に暮らしていたものの、
一緒に朝を迎えたのは、これが初めてだった。
杏寿郎が、目の前にいるなんて…
こんなにも
幸せな時間は 他にないなあ
指の隙間をするりと抜ける髪と、
穏やかな杏寿郎の寝顔に
ふみのからは笑みが溢れた。
「──っ、!」
すると、杏寿郎の緋色の瞳が突然ぱちりと開き、
それと同時に、ふみのはふわりとその手を握られた。
優しく微笑む杏寿郎に、
ふみのの心臓がとくんと跳ねた。
「ふみの、おはよう」
「お、おはよう!
ごめんね、起こしちゃた…?」
「いや、ふみのの香りがして目が覚めた。
…何処か、痛むところはないか?」
「うん、大丈夫よ。
…もしかして、ずっと抱きしめてくれていたの…?」
「ああ。…すまない、苦しかったか?」
「ううん!全然…!
…嬉しいなって、思って」
恥ずかしくも、嬉しそうに上目遣いをするふみのに
杏寿郎も自然と笑みが溢れる。
「ふみのは本当に愛いな…」
杏寿郎は目を細めると、
その唇がふみのの額にふんわりと落ちる。
触れただけの口付けが静かに離れると
ふみのはさらに頬を赤らめた。
「っご、ごめんなさい、私…、
いつの間にか寝ちゃってて…。
お夕飯も作らずに…、
お腹…空いちゃったでしょう?
千寿郎くんにも、心配かけちゃ…っ」
言いかけている途中で、
杏寿郎の指先がふみのの口元に充てがわれた。