火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第3章 生き残った一人の少女
その様子を見て、
杏寿郎はふみのに声をかける。
「?、ふみのさん?」
ふみのは杏寿郎を見つめ、
その難しそうな言葉を指さした。
「ああ!これは『猛虎硬爬山(もうここうはざん)』と読みます!
外国の有名な技名で、拳を相手に打ち込み、
相手の隙を見て、自分の技を繰り出すものだそうです!」
ハキハキと話す杏寿郎に、ふみのは感心していた。
(杏寿郎くんは、物知りだなあ、すごい…っ!)
初めて聞く言葉と知識に、
ふみのは胸をときめかせていた。
ふと、杏寿郎はふみのとの距離が
近くなっていることに気づき、
はっとして一歩後ろへ下がる。
ふみのは、杏寿郎の動きに首を傾げたが、
他の本も気になり本棚にまた目を移した。
(…まるで、花のような…)
ふみのの香りは
杏寿郎にふわりと漂う。
杏寿郎の胸はどきんと高鳴った。
たくさんの本を見せてもらい、
ふみのは杏寿郎が勧めてくれた本と
もう二冊を借りることにした。
ふみのは本を大切に抱え、
杏寿郎に頭を下げ、部屋を出る。
「また本が読みたくなったら、
いつでも来てください!」
こくりと頷き、嬉しそうにふみのは笑った。
自分だけに向けられたふみのの笑顔に、
杏寿郎は再び胸が高まるのだった。
ふみのは部屋に戻り、
しばらく借りた本を読んでいた。
(そういえば槇寿郎様が言ってた、
渡したいものってなんだろう…)
ふとふみのは思い出し、
槇寿郎の元へ向かうため廊下に出た。
(あ、槇寿郎様のお部屋の場所、どこなんだろう…)
どうしようと廊下を右往左往していると、
瑠火がそこを通った。
「ふみのさん、どうされましたか?」
「……っ」
ふみのは、伝えたいことが話せない自分に
嫌気が差し、俯いてしまった。
察しのいい瑠夏はふみの頭に手を乗せた。
「槇寿郎さんのお部屋、ですね。
ここの廊下を右に曲がって2つ目の部屋です」
ふみのは、ばっと顔を上げた。
どうしていつも自分の気持ちが
分かってしまうんだろうと、
ふみのはまじまじと瑠火を見つめてしまった。