火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第3章 生き残った一人の少女
その日の午後、
ふみのは部屋の縁側に座り、庭を眺めていた。
午後の日差しが草木を照らし、
風に揺れる姿は朗らかだった。
心が澄んでいくようで心地良い。
すると、とんとんと襖が鳴った。
「ふみのさん!
少し話しをしたいのだが、いいだろうか!」
後ろを振り返り、開いた襖の隙間から
杏寿郎が顔を覗かせていた。
こくこくと頷くと、杏寿郎は部屋に入ってきた。
少し距離をとったまま向かい合って座る。
「……」
「……」
初めての二人きりの空間に
気まずい時間が流れた。
何か用があるのかなと、杏寿郎を見ていると
緊張した面持ちでふみのに話しかけた。
「あ、あの!ふみのさん!
ふみのさんは、その、鍛錬や武術に、
興味が、ありますか!?」
「……?!」
予想外なことを聞かれて、きょとんとするふみの。
たしかに庭先で杏寿郎達の様子を見ていたが、
そこまで興味があるわけではなく、
ただ見ていた、というのが本音だった。
杏寿郎は、ふみのが鍛錬に興味があるのかと勘違いし、
ずいっとふみのに近寄る。
「も、もし!鍛錬や他にも興味があったら、
俺の部屋にその類いの本がたくさんある!
気に入ったものがあれば、ぜひ、読んでほしい!」
思いもしない提案に、ふみのは驚いたが、
本は小さい頃から大好きだったので嬉しくなった。
こくこくと大きく頷くと、
杏寿郎はぱっと笑顔になった。
「よかったら今から部屋に本を見に行きませんか?」
こくんと頷くと、杏寿郎はふみのを自室へ案内した。
杏寿郎の部屋には、たくさんの本があった。
新しいものから、かなり年季が経っているものまで
ずらりと本棚を埋め尽くしていた。
初めて見る本の種類に、ふみのはわくわくした。
ふみのは、端から順番に背表紙を眺めていると
杏寿郎は一冊の本を取り出して、ふみのに渡した。
「これは武術の基礎が書いてある本です!
初めてなら、まずこれが読みやすいです!」
何度も読んでいるのか、表紙は取れかけていて
沢山のしおりが挟まっていた。
ぱらぱらとめくっていると、初めて見る言葉を見つけた。
(なんて読むのかな…)
ふみのは分からず、
じっとその言葉を見つめる。