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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*




部屋の中は、月夜の僅かな明るさにもかかわらず、ふみのの冴え冴えとした白い肌が鮮やかに杏寿郎の視界に映り、その優美さに息を呑んだ。

それに見惚れていると、ふみのの右肩に垂れ下がる髪の合間から見えた傷跡に、杏寿郎は目を見開いた。

「…っ」

自分を鬼から庇ってくれたことにより
負ってしまったその痛々しい傷跡に
杏寿郎はぐっと唇を噛む。

「…?杏寿郎…?」

突然、顔色が変わった杏寿郎を
ふみのは心配そうに見つめた。

「…ふみの、痛むだろう…」

杏寿郎は悔やむように顔を顰めた。
あの時のふみのの苦しみを思うと
杏寿郎は痛いほどに胸を締め付けられた。


「ううん、大丈夫よ。

 …ねえ、杏寿郎?
 杏寿郎も、私も、生きてる。

 それだけで、もう充分、嬉しいの。
 …だからお願い。そんな顔しないで…?」


ふみのは俯く杏寿郎に左手を伸ばし、その頬に触れた。
杏寿郎もそれに重なるように
手をのせてぎゅっと握ってくれた。

「杏寿郎の手はいつもあたたかいね」

「ふみのの手も、そうだ。
 …あたたかく、やさしい手だ」

「ふふっ、それは杏寿郎もよ?」

ふみのもにっこりと微笑むと
杏寿郎にも笑みが戻った。



 杏寿郎の笑顔が こんなにも愛おしくて

 杏寿郎の陽の光のような

 優しい微笑みを

 ずっと 見つめていたい


 その頬に 触れていたい



ふみのは、僅かに動く右手を動かし、
杏寿郎へと伸ばそうと必死に試みるも、
それは悲しくも叶わない。

「…ふみの?」

その動きに気づいた杏寿郎は、
ふみのの右手をそっと握ってくれた。

「…杏寿郎にね、…触れていたいの」

杏寿郎は懸命に願うふみのの瞳を見て、そっと頷く。

「…ああ、分かった」

杏寿郎は、痛くはないかと何度も聞きながら、
少しずつ自分の頬へとふみのの右手を持ち上げてくれた。

不思議と痛みはなかった。


ふみのの右手が杏寿郎の頬に添えられる。
杏寿郎はしっかりとふみのの右手を握りしめていた。


両手から杏寿郎の頬のあたたかさが手に伝わると
ふみのは嬉しさのあまり涙が止まらなかった。


「…私、すごく、しあわせ…っ」

「ああ、俺もだ」


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