火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*
夜月に照らされ、ふみのの睫毛が瞬き、揺れ光る。
杏寿郎は思い切ったように、ふみのを見つめ問う。
「…ふみの。
…何故突然、俺を避けるようなことをした…?」
その視線にふみのは息を呑み、
少しずつ今までの思いを吐露した。
「……自分の…所為だと思ったの。
蓮が、亡くなってしまったことが」
「でもふみの、それは…っ」
「…うん、違うって何度も思ったりもした。
…でも、本来私に降りかかる呪いが、
蓮に向けられてしまったんじゃないかって…、
そう…思ってしまったの…」
ふみのからは、大粒の涙が頬を伝っていた。
「…呪いは…、私が大切に想う人に…、
降りかかってしまうのかなって…、
勝手に、思い込んでしまったの…。
…そう思った途端、
私…怖くなって…っ。
…杏寿郎と、このまま一緒にいたら…、
この災いが…、杏寿郎にも降りかかって
しまうんじゃないかって…っ。
本当に、そうなったら、私…っ、
…杏寿郎にまで、何かあったら、耐えられない…っ。
…杏寿郎が、いなくなったら…私……っ」
杏寿郎はふみのの手をそっと掴み、
自分の腕の中に閉じ込めるように
優しくも、強く抱きしめた。
「ふみの…、
…一人で沢山抱え込んで…苦しかったろう…。
何も気付けず、すまなかった…」
ふみのは杏寿郎の着物の襟元をぎゅっと掴んだ。
「…杏寿郎は、何も悪くない…。
…ごめんね…杏寿郎…っ、
たくさん傷つけて…本当に、ごめんね…っ」
ふみのは杏寿郎にしがみつき、
肩を震わせ泣いていた。
杏寿郎はふみのが自分を避けていた理由を知り、
ただその思いに胸を痛めた。
誰にも打ち明けられずに
柱として、己に課せられた責務をこなし、
目の前の鬼に一人で果敢に立ち向かい、
どれだけ辛い思いをしていたのだろうか。
己を殺しながら、日々を淡々と過ごし、
真相が殆ど分からない呼吸の謎に苛まれ、
怯えながら一人泣いた夜もあっただろう。
杏寿郎は泣き続けるふみのを抱きしめながら、
やさしく頭を撫で続けた。