• テキストサイズ

火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*




杏寿郎は何度も手伝うと話すも、
お客様なんだからゆっくりしていてと
ふみのに止められてしまった。



「杏寿郎、お待たせ」

ふみのは杏寿郎の傍に膝をつき、
盆に乗せた湯呑みを一旦床に置くと、
にこりと微笑みながら、縁側に座る杏寿郎に差し出した。

杏寿郎は、ありがとうと嬉しそうにそれを受け取った。

すると不意に、
湯呑み越しに二人の手が重なった。

たったそれだけなのに、
二人は互いの肌の感触に、どきんと心臓が鳴った。
ふみのの頬は紅潮し、鼓動は性急に速まる。

「っあ、熱いから、気を付けてね!」

ふみのは赤く染まった頬を隠しながら
杏寿郎の右隣に腰掛けようとすると
杏寿郎は湯呑みを盆の上に置き、
ふみのの左手を持ち、支えてくれた。

「…あ、ありがとう」

ふみのの照れた顔を
杏寿郎は愛おしそうに見つめた。
その眼差しにふみのの火照った頬は
さらに熱を増していく。

二人の間(ま)を夜風がしずかに擦り抜け、
虫の音が縁側の草木を綾なしていくようだった。

もう日はすっかり落ち、
夜空には幾千もの星が瞬いていた。


杏寿郎はふみのの左手を握りながら、
空を見上げていた。

「…星が…よく見えるな」

「そうなの。
 ここで毎晩、星を眺めるのが好きで…。
 …そういえば小さい頃、千寿郎くんと三人で
 夜中にこっそり書斎に入って、
 お部屋の大きな窓から流れ星を探したわね。
 ふふっ、懐かしい…っ」

「ああ…そうだったな。
 父上と母上に見つかりやしないかと
 気が気でなかった」

杏寿郎はくすくすと苦笑いをしていた。
ふみのは眉尻が下がった杏寿郎の笑顔に
ぎゅっと胸が締め付けられた。


 ああ 私は杏寿郎に

 心の底から 恋を しているんだ


ふみのは杏寿郎を横顔を見つめながらそう思った。

今宵もその時と同じくらいの満天の星たちが輝いていた。

「…杏寿郎の部屋で、
 たくさんの本を、一緒に読んだね。
 杏寿郎は何でも知っててすごいなあって
 いつも思ってたもの。
 …あの時から、杏寿郎は…私の憧れだった」

今までの思い出に二人の心はじんわりと癒され、
自然と笑みが溢れてくる。
ふみのの微笑みに
杏寿郎は心ごと奪われていた。

/ 545ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp