火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第1章 本家と分家
その夜のこと。
ふみのとよしのは和室の居間にいた。
「よしの、また悪戯をしたの?」
「だって、ふみのねえさまはお琴の練習で、
かあさまも健一郎もいないし退屈だったんだもの!」
「だからといって悪戯は良くないでしょう。
今回はとうさまも怒っていらっしゃるそうですよ?」
「だってえ…」
泣きそうになっているよしのだったが、これは自業自得。
まったく…とふみのは頭を抱えたが、思いつくようによしのに言った。
「…よしの、もう絶対絶対、絶対に悪戯しない?」
ふみのは、じっと真剣によしのの目を見る。
その瞳によしのは、はっとする。
少ししょんぼりと項垂れていたよしのが
顔をあげて涙目になって口を開く。
「…もうしません。…本当にごめんなさい」
今にも泣き出しそうなよしのの頭を
ぽんぽんとふみのは撫でる。
「とうさまとかあさまには私が話しておくから。
私から注意して、よしのは本当に反省していましたよって。
心を入れ替えているようなので、
もう怒らないでくださいって。」
それを聞いてさらに泣きそうになったよしのに
ふみのは眉を下げて笑う。
「もう!毎回そんなふうになるのに何回も悪戯をして!
もう次は庇ってあげないからね?」
まったくよしのは!とつくつく笑うふみのを見てよしのは、
躊躇ってぼそぼそと話した。
「…お琴の練習もあるかと思いますが、
よしのとも遊んでください。ふみのねえさま」
上目遣いで泣き出しそうなよしのは、なんとも可愛らしかった。
確かに最近は琴に夢中で、一緒に遊んでいなかったなと
ふみの自身も反省した。
「私も琴に夢中になりすぎていて、
寂しい思いをさせてごめんなさい。
明日、健一郎も連れて隠れんぼをして遊びましょう!」
そう言うとよしのは、ぱあと笑顔になる。
可愛い、自分の妹は世界一可愛いと思った。
よしのの肩を抱き寄せてふみのは言う。
「私はよしのが大好きですよ!」
ぎゅっと力を込めて抱きしめると、
よしのもぎゅっとふみのの着物を掴んだ。
「よしのもふみのねえさまが大好き!」
二人して笑顔になるふみのとよしの。
そんな二人の様子を、襖の隙間から
健蔵とみちは愛おしそうに見ていた。