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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*




薫子はふみのの意向をしのぶに伝えた。
しのぶは完治したばかりのふみのの怪我を案じたが
その気持ちを汲み取り、
絶対安静と伝え屋敷へ戻ることを約諾した。

ふみのは終始笑顔でしのぶの話しを聞いていたが
今にも泣き出しそうなふみのの笑みに
しのぶは締め付けられる思いだった。

しのぶは抗菌薬と鎮痛薬を処方し、
ふみのは薫子と数名の隠に支えられて
屋敷に戻っていった。







「…ふみの様、布団が敷けましたので、こちらに」

薫子はふみのを布団にそっと寝かせると、
ふみのが片腕でも身の回りのことをやりやすいようにと
なるべく手の届く範囲に物を下げたりと家の中を整えてくれた。


気付けば、時刻は午後を回っていた。

ふみのは日差しが照りつける縁側を布団から眺めた。
いつもと変わらない庭の装いに安堵するのも束の間、
再び涙が込み上げてきた。


「…どこか痛みますか?」

片付けを終えた薫子は
心配そうにふみのの枕元に腰を下ろした。

「…ううん。大丈夫。
 色々と…ありがとう。薫子さん」

「いえ…。
 何かあればお呼びください。
 すぐに参りますので…」

「…ありがとう。
 少し…一人になっても、いいかしら」

「勿論です。
 …ですが、ご無理はなさらないように」

ふみのは微笑んで頷くと、
薫子は深々と頭を下げて部屋を出ていった。

ふみのは目を閉じると、
そのまま深い眠りへと落ちていった。





辺りが夕陽に染まる頃、
ふみのはふと目が覚めた。

しのぶからの薬が効いているのか、
痛みも大分治まっていた。

日が落ちた後の夕闇は
どうしてこんなにも人を淋しくさせるのだろう。

ふみのは心細い気持ちを隠すように
薫子が近くに置いてくれていた行燈に光を灯した。

なんとか火をつけられる握力は
右手にかろうじて残っているようだった。

ふみのは水を飲みに台所に向かうと
流しの横に置かれた手紙に気付いた。
そこには薫子の文字で、
「中身は梅干しです。良かったらお召し上がり下さい」と書かれていた。
ふみのは布巾をそっと開くと
三角にゆわれたお結びが二つ入っていた。

薫子の優しさに、ふみのはじんわりと心があたたまった。

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