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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*




「私のことは気になさらないでください…っ。
 ふみの様がお目覚目になって、
 これ以上の喜びはありません…っ。

 炎柱様も、炭治郎さんも
 皆さん無事に回復されています。
 多分、今は機能回復訓練を
 受けていらっしゃるのかと…。

 昨晩も、炎柱様がいらして…、
 …!! ふみの様…っ?!」

ふみのの目からは涙が溢れ落ちていた。

「…ごめんなさ…っ、
 皆が 無事だと聞いたら…安心して…っ」


杏寿郎が生きている。

そして炭治郎達も。

皆が生きている。


言葉にできないほどの
嬉しさと安堵の気持ちが込み上げてくる。

涙で視界が滲む中、
ふみのは殆ど力が入らない右手を左手で包みこんだ。
自分の腕なのに、力を入れても右腕はびくとも動かない。

「…薫子さん…、私の日輪刀は…?」

「…屋敷に…ございますが…。
 で、ですがふみの様、その腕ではもう…っ」

薫子はその先を話そうとするも声が詰まってしまう。
ふみのも薫子が何を言わんとしているのかを分かっていた。

「…少しでも動くなら刀を…私は握りたい。
 …まだ私は何一つ、やり遂げてないの…!」

ふみのの声は震え、
頬からの涙が布団に落ち、跡をつくる。


「…でももう、腕が…全然…動かないの…っ」


ふみのは声を殺して泣いていた。

この手で、日輪刀で数え切れないほどの鬼の頸を斬ってきた。

自分を鬼から守ってくれていた日輪刀と光の呼吸。

共に試練を乗り越え、戦い、掛け替えの無い存在になっていた。

しかしもう二度と、自らの手で、鬼を滅することはできないのだ。

ふみのは現実を受け止めようと
必死に自分に言い聞かせるも
悔しさで胸が痛むほど苦しい。

自分の無力さに打ち拉がれ、
鬼殺隊として、柱として何も成せていないことに虚しさが募る。

ふみのはどうしていいか、分からなくなっていた。


「…薫子さん…っ、
 …屋敷に…帰りたい…っ」


薫子は泣き崩れるふみのを
強く抱きしめた。

「ふみの様…っ、一緒に帰りましょう…。
 私はふみの様のお側にずっとおります…っ」

ふみのは左手を薫子の背中に回し、
その隊服をぎゅっと掴んだ。

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