• テキストサイズ

火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第19章 目覚めたその視線の先に ˖☽°.*




体が酷く重い。

ふみのは音も光もない、
虚しさと寂しさがひしひしと漂う混沌とした闇の中を
ただ一人歩いていた。


 私は どこに向かって 歩いているの…?


今までの記憶さえ曖昧にさせるこの異様な空気は
ふみの意識を更に朦朧とさせる。
そして体の末端が氷のように冷たくなっていく。
ふみのは徐々に感覚が無くなる指先を見つめた。


気付くと、その手が
真っ赤な血に染まっていた。


「…っ、何…これ…っ」






『……驚いたか?』






暗闇から、唸るような低い声が聞こえた。
でもそこに人の気配はなかった。

「誰…?誰なの…?!」

『まあ、そんな怖い顔すんなって…。
 …その血、誰ンのだと思う…?』

「えっ…?」

大勢の人に心の中を誰か覗かれているような、
不気味な視線にふみのは背筋がぞわりと凍る。


『お前さんが愛おしく想う男…、
 “レンゴクキョウジュロウ”のみてぇだなあ…?」

「そんな…っ!?そんなことないわ!!
 だって…杏寿郎は最後私を抱えて…っ」

『それはそン時の話だろ…?
 あの後、死んじまったんだよ、杏寿郎は…』


 …そんな…っ


ふみのはその場に崩れ落ちた。

『…可哀想になぁ。…でも大丈夫だ。
 俺が傍にいてやっから…、な…?』




 杏寿郎が 死んでしまったなんて

 そんな まさか



 私が もっと早く 
 あの場所に行けていたら

 私に あの鬼を
 倒せるほどの力があれば

 杏寿郎は 助かったかもしれない


 私は 杏寿郎を 守れなかった


 私の心を照らし続けてくれた
 杏寿郎が 死んでしまったなんて


 ごめんね 

 本当に ごめんね 杏寿郎




頬を伝う涙の温かさに、体が冷たくなっているのだと気付く。
ふみのの肩を撫でるようにずしりと重い空気が乗った。
それは、するすると体に入り込み、不思議と不快さが感じられない。



 もう このまま 死んでも構わない



ふみのは地面にゆっくりと横たわった。
目を閉じると、体が暗闇に静かに溶け込んでいくようだった。



 最後にもう一度だけ

 杏寿郎に 会いたかったなぁ…




















『 ふみの 目を醒ませ─────… 』

/ 545ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp