火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
杏寿郎が薫子に手渡したのは、
小紫色の御守りだった。
「…!これ…っ!」
薫子は大きくその目を見開いた。
「ふみのが俺に持たせてくれたものだ。
これのお陰で、俺は鬼の術を解けた。
…きっとふみのを守ってくれる」
薫子は御守りを受け取ると、
両手で大切に包み込んだ。
「…祈っていたんですね。ふみの様はずっと」
「…どういうことだ?」
「時々見かけていたんです。
ふみの様が…目を閉じて
胸の前で何かを握りしめているのを。
…きっとこの御守りです。
炎柱様の御武運を…いつも祈っていたのだと思います」
「…っ」
杏寿郎は眠るふみのに近寄り、
その頬に手を添えた。
「…ふみの…。ふみののお陰で
俺は今、この命を生きている。
…ふみのの声が聞きたい…。
どうか、目を覚ましてくれ…っ」
夕闇に染まる部屋に、
杏寿郎と薫子は明かりも付けないまま
ふみのを見ていた。
ふみのは暗い夜道のような
果てしない漆黒の暗闇の中を
一人彷徨っていた─────