火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
「…いえ。炎柱様…宜しいのですか。
勝手に病室を抜け出して」
「…ふみのの様子を見に…。
君にも心労をかけてしまい…申し訳ない」
薫子は静かに泣いていた。
「…きっと、心配します、ふみの様…」
「…?」
「…ちゃんと横になってなくちゃ駄目だよって…っ、
…ふみの様が、起きていたら、
きっと…炎柱様に、そう言います…っ」
「…っ」
『…杏寿郎!手首、怪我してるわ!』
『!ああ、これか!大したことはない!平気だ!』
『駄目よ!ちゃんと手当しないと…っ』
『すぐに治る!問題ない!』
『・・・えーと、何方様だったかしら?
肩の傷から発熱して
蝶屋敷で点滴を受けたのは?』
『む、むぅ…そんなこともあったな…』
『ほら、すぐに終わるから!
ここに座って?』
どんな些細なことも気に掛けてくれて、
やさしい眼差しを
向けてくれていたふみの。
ふみのの声が
杏寿郎の胸に響いてくるようだった。
薫子の頬には涙が伝うも、
そのまま拭うこともせず、
杏寿郎に話し続けた。
「ふみの様は…誰よりも
炎柱様を想っていらっしゃいます。
…ご自身がどうなろうと、
炎柱様を必ず守り抜くと…、
…そう心に誓っていらしたんだと思います」
杏寿郎はその言葉に目頭が熱くなる。
杏寿郎もふみのを
命を賭けて守ろうとこの胸に誓っていたのに、
このようなことになってしまったことに、
もう言葉が出てこなかった。
沈黙が流れ、
杏寿郎は手に握っていたものを薫子に差し出した。
「…これを、ふみのの傍に置かせて欲しい」
「…?」