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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第18章 無限列車




「杏寿郎…、今まで…ごめんね…。
 守っ て…あげら れなくて…ごめんね…」

「…ふみの…っ」


杏寿郎は、自分の口元に触れたふみのの手を握ろうと
手を伸ばしたが、ふみのの手は
杏寿郎の手をすり抜けるようにぱたりと落ちた。

ふみのの瞼が、静かに閉じてゆく。

「…!?ふみの!?ふみの!!!」

「ふみのさん!!!」「ふみ!!!」

杏寿郎達の呼びかけに、
ふみのは応えなかった。



暫くして、禰󠄀豆子の箱を持った善逸と
隠と共に救護にきたしのぶと薫子が現れた。

大怪我を負ったふみのは直ちに蝶屋敷に運ばれた。

杏寿郎と炭治郎も自力で歩けたものの、
傷は思った以上に深かった。

列車の乗客二百名は、
怪我を負った者もいたが、皆命に別状はなかった。


熱き死闘は、静かに幕を下ろした────






ふみのの肩は重症だった。

ふみのは急所を避けるように
猗窩座の一撃を受けていたものの、
かなり致命的だった。

数時間に及ぶ手術がしのぶと専門の医師により行われた。
薫子はその間、ずっと廊下の長椅子でふみのを待った。

杏寿郎や炭治郎も処置を受けると、
蝶屋敷にて暫く安静と言い渡された。

無事にふみのの右肩の施術は終えたが、
術後の説明で薫子はしのぶと医師より、
大まかな動作は可能だが
もう日輪刀を握ることは不可能だろうと宣告された。

薫子はそれに酷く驚愕し、
ふみのの寝る寝台の横で泣いていた。
誰よりもふみのの呼吸のことを慕っていた薫子は
その事実を受け止めきれなかった。

杏寿郎もふみのの容態をしのぶから聞き、
その事実に耳を疑った。

杏寿郎は自分を庇ったことでふみのに
酷い怪我を負わせてしまったと己を責めた。



杏寿郎は骨折と傷の手当をしてもらうと、
周りに気付かれないように寝台を抜け出し、
ふみのの病室に向かった。

ふみのの病室の扉をそっと叩くと、
鼻をすする音の後、どうぞと薫子の声が聞こえた。

扉を開けると寝台の横で、
目を真っ赤にさせている薫子は
ただふみのを見つめていた。

「…突然、すまない」

落とすように話す杏寿郎に、
薫子は目を向けずにいた。

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