火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
ふみのはその場に崩れ落ちた。
「ふみの!!!」
杏寿郎はふみのを抱き寄せ、
その肩の傷に自身の羽織を添えた。
出血は一向に収まらず、
どんどん羽織を赤く染めていく。
「ふみの…っ!!」
「……杏…寿郎…」
杏寿郎の呼びかけに、ふみのは弱々しく応えた。
ふみのは目を閉じたまま苦しそうに顔を顰めていた。
そして朝日が辺りを照らし始めた。
炭治郎が猗窩座の後を追いかけ、
その後ろ姿を目掛けて日輪刀を投げつけた。
「逃げるな!!卑怯者!!!」
炭治郎が猗窩座に向かって声を張り上げた。
「いつだって鬼殺隊は
お前らに有利な夜の闇の中で
戦っているんだ!!
傷だって簡単には塞がらない!!
失った手足が戻ることもない!!
逃げるな馬鹿野郎!!馬鹿野郎!!
お前なんかより、
煉獄さんとふみのさんの方が
ずっと強いんだ!!
煉獄さんもふみのさんも負けてない!!
誰も死なせなかった!!
戦い抜いた!!守り抜いた!!
お前の負けだ!!
煉獄さんとふみのさんの勝ちだ!!」
炭治郎は泣き叫び、その場に蹲った。
「…もう、大丈夫よ…炭治郎くん…」
ふみのは肩で息をしながら、炭治郎を呼んだ。
「…!ふみのさん…っ」
炭治郎はふみのの元に駆け寄った。
「さっき、ふみのさんの鴉が隠達を呼びに…っ。
もうすぐにここにくると思います…っ」
「…そう…、早く汽車の…皆の 手当を…っ」
「ふみの、もう何も話すな…っ」
杏寿郎の腕の中でふみのは荒く呼吸をしていた。
その目がゆっくり開かれると、
杏寿郎の揺れる緋い瞳をじっと見つめた。
「…杏寿郎…。酷い ことばかりして…、
本当に…ごめんね…」
「何を言う…っ。
…謝るのは俺の方だ…、
ふみのにこんな酷い傷を…っ」
「…私…杏寿郎を守るって…傍にいるって
約束したのに…何も果たせなかった…」
「ふみの…!直に隠が来る、もう話…」
杏寿郎がそう言いかけていると、
ふみのの指先が杏寿郎の口元へと伸び、
その唇に当てられた。