火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
(許さない…!
私は鬼を絶対に許さない…!!)
猗窩座が一瞬怯んだ隙に
杏寿郎は猗窩座の右手首を掴み、
その腕からから刀を勢いよく引き抜いた。
ザンッッ
杏寿郎はふみのが刀を差し込んだ反対側から
猗窩座の頸に刃を勢いよく斬り込む。
しかし、二人の刀はびくともしない。
「貴様ら…っ!!」
猗窩座は両腕を二人に捕まれ、
頸の両側からは二本の日輪刀が迫る。
全く身動きが取れず窮地に追い込まれた。
「ふみの…!!もう刀を下ろすんだ!!!」
「嫌…っ!!
頸を斬るまでは
絶対に下さない…っ!!」
体の中で湧き上がる狂気にも似た感情が
本来のふみのを消し攫っていく。
ふみのの足元には
既に多くの鮮血が溜まり始め、
杏寿郎はそれに目を見開く。
(まずい…、このままではふみのが…っ!!)
ふみのはぎりぎりと
更に刀に力を込めた。
(…私はこの鬼を、絶対に斬る───…)
その時。
『 今スグ
日輪刀ヲ
下ロセ─────… 』
(…!? 誰の…声…!?)
ふみのの鼓膜に誰かの声が響き渡る。
キィンッッ──────…
その途端、
ふみのの日輪刀の刃が根本から折れた。
(!!! 刀が…っ!!)
それでもふみのは
猗窩座の左腕をきつく握り、
その手を離さなかった。
「ふみの…っ!!もう下がれ!!!」
「嫌!!絶対に離さない!!!」
杏寿郎の刀が猗窩座の頸の半分まで進んだ時、
辺りが薄らと明るくなり始めた。
徐々に夜明けが近づいていた。
猗窩座の表情が一変する。
(!!!
しまった…っ!
この場所には陽光が当たる…!!)
猗窩座は明るくなる東の空を横目で見た。
焦りから、ぎりっと歯を軋ませる。
杏寿郎とふみのは最後の力を振り絞り、
猗窩座を離すまいと全神経を集中させる。
「くそ…っ!!!
そこをどけえええええ!!!!!」
「絶対に逃がさん!!!!!」
ギィンッッ─────
───ブチッ バキバキッッ
猗窩座は杏寿郎の日輪刀を折り、自ら腕を捥いだのだ。
その場から宙を舞い、瞬時に森の中へと姿を暗ました。