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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第18章 無限列車




ふみのの肩からは止めど無く鮮血が流れる。
全身を焼かれるように肩から熱を帯びていくが、
それと相反するように、身体の芯から激しい悪寒が走る。
隊服に温い血液が伝っていくのが分かった。

「愚劣な小娘め…!!」

猗窩座は激しい剣幕で怒りに満ちていた。

「ふみの!!!猗窩座から離れろ!!
 その手を離すんだ!!」

ふみのの目の前から音が掻き消されていく。 
杏寿郎の声が霞んで聞こえた。

ふみのから少しずつ意識が遠のき、
猗窩座の腕を握る左手の力が弱まっていく。




 平和な世界にしようと

 皆が こんなにも命を賭けて
 鬼に立ち向かっているのに

 鬼は躊躇いもなく
 その命を切り裂いていく

 そして罪もない人々の命も
 鬼は容赦なく攫っていく

 
 大切な人を目の前で
 奪われる哀しみは

 自分の身体を抉られるよりも辛い

 そして
 一度負った心の傷が癒えることはない


 命は 決して蘇らない

 止まったその息吹が

 吹き返すことは二度とないのだ


 その声を 笑顔を やさしいぬくもりを

 あたたかいその手を握れるのは

 触れることができるのは

 そこに命が漲っているから


 杏寿郎までいなくなってしまったら


 私は どう生きていけばいいの



 私の 大切なひと


 心から こんなにも
 愛おしく想うひと


 絶対に 守る


 そう胸に 誓った


 なのに 私は 杏寿郎を守れていない


 ごめんね 杏寿郎

 私が弱いばかりに



 私は 杏寿郎を傷付けてばかりだ



 こんな自分が 嫌い

 自分も 鬼も 大嫌いだ





ふみのは胸の悲痛な叫びを
奥歯で咬み殺す。

湧き上がる怒りと憎悪で感覚がおかしい。
ふみのは肩の痛みすらもう感じていなかった。

ふみのに今までにないほどの怒りが渦巻く。
朦朧とする意識の中、
ふみのの空な目は猗窩座を刺すように睨んだ。

「…わないで…」

「何…っ!?」




「…これ以上…
 私から大切な人を奪わないで…っ!!!」




ふみのは歯を食いしばり、
右手で握りしめていた日輪刀を
猗窩座の頸に勢いよく刺し込んだ。

「ガッ…ッ!この…っ!!」

「ふみの!!??」

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