火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
「…光の呼吸 弐ノ型 燐閃…っ!!」
光沢を帯びた鋭い目付きの光輝な九尾が
猗窩座の脚に食らい付いていた。
ふみのは頸の痛みで視界が眩む中、
立ち上がり、日輪刀を振り翳していた。
猗窩座はふみのに振り向き、激しく睨む。
「…この…っ!俺の邪魔をするな!!!」
「…もう…止めて…っ」
よろめきながらも、ふみのは杏寿郎の元へと走った。
視界が歪み、その距離が酷く遠く感じる。
ふみのの九尾は猗窩座に蹴り飛ばされ、
光の粒を散らしながら跡形も無く消えた。
猗窩座の怒りは収まることなく、
そのまま目の前の杏寿郎に牙を向ける。
「杏寿郎!!お前は此処で死ぬ!!!」
猗窩座の右腕が、凄まじい勢いで
杏寿郎を目掛けて飛んできた。
「…っ炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!!」
杏寿郎も両腕で刀を握りしめ、
猗窩座の攻撃を振り切る。
刀は猗窩座の右腕を真っ二つに裂くが、
そのまま杏寿郎へと腕は伸び、脇腹を掠めた。
杏寿郎の隊服は裂け、赤く滲んでいく。
そして猗窩座の右腕は、
杏寿郎の日輪刀の刃を食い込んだまま直様再生された。
(!? 日輪刀を自ら腕に…!?)
猗窩座の右腕に日輪刀を固定され、
杏寿郎は両腕で刀を引き抜こうと踠くが
微動だにしない。
猗窩座は杏寿郎を身動きが取れないように仕掛けていた。
杏寿郎の足元には脇腹からの鮮血が滴っていく。
猗窩座が勝ち誇った笑みを浮かべた。
「これで最後だ!!!」
「…っ!!!」
杏寿郎の目元を目掛けて
猗窩座の左腕が鋭く舞い込む。
ザンッッ────…
「…ふみの…っ!?」
杏寿郎は目の前の光景に目を見開く。
眼前にはふみのの背中があったのだ。
ふみのの右肩には、猗窩座の左腕が減り込み、
生成り色の羽織はみるみるうちに赤く染まっていく。
ふみのは自身の右肩にある猗窩座の腕を
それ以上動かせないように左手で掴んでいた。
「ふみの!!!!!」
ふみのからは
荒い息遣いだけが聞こえた。
「貴様……っ!!!」
猗窩座も唸るような声を上げる。
「つっ…っ」
今まで感じたことのない激痛が
ふみのを襲った。