火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
しかし炭治郎は列車の運転手により
腹部を刺され負傷し、地面に横たわっていた。
(煉獄さん…禰󠄀豆子…善逸…。
他の乗客は無事だろうか…)
傷の痛みに加え、
ヒノカミ神楽の反動が炭治郎を更に苦しめた。
炭治郎は堪えるように目を閉じ歯を食いしばる。
「全集中の常中ができるようだな!感心感心!」
炭治郎が目を開けると、そこには杏寿郎がいた。
「煉獄さん…!」
「常中は柱への第一歩だからな!
柱までは一万歩あるかもしれないがな!」
炭治郎は杏寿郎から呼吸によっての止血方法を教わり、
無事に腹部からの出血を止めることができた。
「呼吸を極めれば様々なことができるようになる。
何でもできるわけではないが、
昨日の自分より確実に強くなれる」
「…はい!」
杏寿郎は炭治郎ににっこり微笑む。
「皆無事だ!
怪我人は大勢だが、命に別状は無い!
…君はもう無理せず、ゆっくり体を休めろ」
「はい!ありがとうございます…!」
ドオオォォン─────…
「「……っ!?」」
突然、大きな地響きと共に
視界が歪むような凄まじい威圧が、
砂埃を巻き上げながら杏寿郎と炭治郎に襲いかかった。
静かに舞う埃の中に見える、二つの異様な光り。
徐々に埃が収まり、
そこには人間、否、鬼が一人佇んでいた。
二つの光りは鬼の目だった。
その眼球には、“上弦”“参”と印されていた。
紅梅色の短髪が静かに靡く。
鍛え上げられたその体には、
藍に染まるの線状の文様が
幾つも刻まれている。
(上弦の…参…?
どうして今ここに…っ?!)
炭治郎は目の前の状況に言葉を失い吃驚していると、
鬼は先程までいた場所から、
音もなく炭治郎の額を目掛けて
拳を振り翳していた。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!!」
杏寿郎の刀が、勢いよくその鬼の腕を裂いた。
鬼は軽快にそこから身を翻す。
裂かれた腕は驚くほどの速さでその傷を再生した。
「…いい刀だ」
鬼は手に付いた血を舐めとり微笑する。
「なぜ手負いの者から狙うのか理解できない」
杏寿郎は鬼を睨みつける。
「話の邪魔になるかと思った。俺とお前の」
鬼は蔑むように笑う。
杏寿郎の声色は既に怒りを含んでいた。
「初対面だが、俺は既に君のことが嫌いだ」