火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
「…? …うん!
ここで、杏寿郎のことを待ってるね」
「…ふみの」
「ん?」
「俺は…ふみのが好きだ。
例えどんなことがあろうとも、
俺はふみののことを、想い続ける」
杏寿郎の熱い眼差しが
ふみのの潤んだ瞳に映った。
「…うん、私も杏寿郎のことが大好きよ。
ずっと…大好き。
本当に夢みたい…」
潤ませたふみのの瞳から
溢れそうな涙がきらりと光り、
その微笑む姿に杏寿郎は胸を打たれる。
「…ふみの」
「なに…?」
「夢が醒めても、
俺は常に、ふみのを想う」
「…? 夢が醒めても?
どういうこと…?」
首を傾げながら
ふみのは更に頬を赤らめて、
杏寿郎を見上げた。
その瞳に、杏寿郎は動けなくなる。
でも、もう行かなければ。
これは現実ではないのだ。
杏寿郎はふみのの頬を両手で包むと
小さな唇に口付けを、そっと落とした。
「…行ってくる」
杏寿郎は駆け足で、屋敷を飛び出した。
杏寿郎の手の中には
御守りが強く握り締められていた。
杏寿郎が夢から目を醒ますと、
列車の中は何か得体の知れない生き物の体内にいるようで
悍ましい肉片がうようよと車内全体を蔓延っていた。
その触手は今にも乗客に
襲い掛かろうとしている。
杏寿郎は掌の御守りを見つめ、
胸元に仕舞った。
杏寿郎は夢の中で抱きしめた
ふみのの温もりを思い出していた。
この御守りが、気付かせてくれた。
鬼の鬼血術から杏寿郎を救ってくれたのだ。
(ふみの…っ!)
杏寿郎は胸元に手を当て、意識を集中させる。
「うたた寝している間に、
こんな事態になっていようとは!!
よもやよもやだ…!
柱として不甲斐なし!!
穴があったら入りたい!!」
(俺は、この任務を、
俺の責務を全うする!!!)
「全集中 炎の呼吸
肆ノ型 盛炎のうねり!!!」
杏寿郎の放つ列車全体を揺るがすような灼熱の炎は
鬼の肉片を根こそぎるように瞬く間に裂いていった。
炭治郎と伊之助は下弦の壱・魘夢を共に討伐し、
杏寿郎、善逸、禰󠄀豆子は乗客の命を全て守り通したのだった。