火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
目の前にふみのがいる。
杏寿郎は一目散にふみのに駆け寄り、抱きしめた。
ふみのからの優しい花のような香りが
杏寿郎をそっと包んだ。
「ふみの…!
戻ってきてくれたのだな…!」
「きょ…杏寿郎っ??
ど、どうしたの?突然…っ。
いつもここに帰ってきているじゃない…っ」
ふみのは杏寿郎に抱きしめられ、
嬉しさと恥ずかしさで頬が紅潮していく。
「ふみのに会いたかった…っ」
「杏寿郎…?何かあったの…?」
ふみのは杏寿郎の様子に驚きつつも、
心配そうに杏寿郎を見た。
杏寿郎は赤く染まるふみのの頬に手を当て、
その想いを口にする。
「俺はふみのが好きだ。
…これからも、
この想いは変わることはない」
「…! 杏…寿郎…っ」
ふみのの目から涙が溢れた。
「すまない、泣かせるつもりは…!」
「ううん、違うの、嬉しくて…っ。
…私も、杏寿郎のことが、大好き…!」
「ふみの…っ」
自分の腕の中に愛おしいふみのがいる。
杏寿郎は更にきつくふみのを抱きしめた。
「ふふ、何て言っていいか分からないくらい、
嬉しくて、幸せ…。
夢みたい…っ」
(…夢……?)
杏寿郎は、はっと我に返った。
杏寿郎は隊服の胸元に違和感を感じ、
ふみのをそっと自分の体から離した。
「…?杏寿郎、どうしたの…?」
「い、いや…!」
そっと隊服の胸元にある物入れに手を当てると
何かが入っている感触がある。
(何だ?これは…)
そっと取り出してみると、
小紫色の御守りが入っていた。
(御守り…?
これはふみのに渡したはず…。
何故ここに…。
…いや先刻、竈門少年から
列車の中で受け取って…。
…列車…?
…そうだ、俺は列車の中だ!
これは夢だ…!!)
杏寿郎は御守りをぎゅっと握り、
ふみのを見た。
「杏寿郎…?」
「ふみの…、
すまないが俺は行かなければならない」
「え…?今から?任務なの?」
「…ああ、必ず戻る。
必ず、ふみのを迎えにいく」