火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
「煉獄さん!これをふみのさんから
預かってきました!」
「…!? ふみのから…?」
炭治郎は小紫色の御守りを
杏寿郎に手渡した。
「はい!煉獄さんに渡して欲しいとのことで…」
(これは俺がふみのに渡した御守り…!)
「煉獄さんと任務に行くことを話したら、
ふみのさん…心配そうにしていました」
(……ふみの…)
杏寿郎は御守りをぎゅっと握りしめた。
(…あれ…煉獄さんから…、
ふみのさんと同じ、切ない匂いがする…。
ふみのさんと煉獄さんって…もしかして…)
「竈門少年、礼を言う!」
「い、いえ!」
(煉獄さん、少し無理をして笑っているような…。
ふみのさんと煉獄さんに何があったのかな…?)
溌剌と笑う杏寿郎から僅かに感じる
淡い恋心のような匂いに炭治郎はまたもや首を傾げていた。
車掌が切符の確認に来た頃、
車両の中に潜んでいた二体の鬼が現れた。
その鬼達を杏寿郎は、
圧巻なる剣捌きで瞬時にその頚を斬り落とした。
そして切符からの仄かに忍ばせた鬼の鬼血術により
杏寿郎達は、深い眠りに落ちていったのだった。
(此処は…)
気付くと、杏寿郎の目の前には、
布団に寝転ぶ槇寿郎がいた。
(そうだ、柱になった報告だ)
杏寿郎はその寝転ぶ槇寿郎に
柱への昇格と就任を伝えるも、
それは呆気なく遇らわれてしまった。
自分のことを目標にしてくれている千寿郎にも
そのことを伝えると酷く落ち込んでしまった。
(でも俺は挫けない…!)
千寿郎は大粒の涙を流していた。
その涙に杏寿郎も涙を堪えた。
杏寿郎は千寿郎を励まし、
そして自分自身をも励ますように
千寿郎をきつく抱きしめた。
「頑張ろう!
頑張って生きていこう!
寂しくとも…っ!」
「はい、兄上…っ」
その夜、杏寿郎は一人自室にいた。
(ふみのとは…本当にこのまま
会えなくなってしまうのだろうか)
杏寿郎は淋しく溜息を吐く。
ガラガラッ
玄関の戸が開く音がした。
(…こんな夜遅くに誰だ…?)
杏寿郎は自室を出て、玄関に向かった。
「あ!杏寿郎!ただいま!」
「ふみの…!?」