火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第18章 無限列車
ふみのは祈る気持ちで
三人の背中を見送った。
(どうか、無事に皆が帰ってきますように。
…杏寿郎もどうか、無事に…)
ふみのは屋敷に戻り、
非番であったが、隊服に着替え夜の警備に備えた。
炭治郎達が無限列車が停まる駅に着く頃、
辺りは日が落ちて暗くなっていた。
「ンだあの生き物は…ッ!!?」
伊之助は生まれて初めて見た汽車を
怯えるように見ていた。
炭治郎も初めて見る汽車をまじまじと眺めている。
そんな二人を善逸が呆れ半分で見ていた。
「…列車分かる?乗り物なの、人を運ぶ!
この田舎モンがっ」
「へえ!これが列車なのか!」
「猪突猛進ッ!!!」
閃いたような炭治郎の横で、
伊之助は汽車に頭突きをしていた。
「こら!伊之助!!」
「やめろ!恥ずかしい!!」
炭治郎と善逸が伊之助を止めていると
ピピーッと警報が鳴った。
「何してる、貴様ら!
刀を持っているぞ!
警官だ!警官を呼べ!」
「やばっ!!やばいやばいやばいっ!!
逃げろ!!!」
炭治郎は目の前を走り出していく汽車、
無限列車へと駆け寄り、その最後尾に飛び乗った。
「うおおおお!!
主の腹の中だ!!戦いの始まりだ!!」
「伊之助!!うるせーよっ!!」
興奮が収まらない伊之助を善逸は押さえつけ、
どうにか静めていた。
「その煉獄さんて人、
顔とかちゃんと分かるのか?」
「うん、派手な髪の人だったし、
匂いも覚えているから!
大分近づいて…」
「うまい!!!!!」
「「「!?」」」
三人は声のした方を見ると
派手な髪色が座席からちりと見えた。
炭治郎が近寄っても、杏寿郎は脇目も振らず
駅弁を美味しそうに頬張っている。
「あの…すみません。…れ、煉獄さん」
「うまい!!!」
杏寿郎は頬張りながら、
炭治郎に満面の笑みを向けた。
「あ、あの、それはスゴく分かりました…」
炭治郎は杏寿郎の隣に座り、
“ヒノカミ神楽”のことを尋ねた。
だが、その言葉自体が初耳だと
あっさりと話を終わらされてしまった。
(そっか…煉獄さんも知らないとなると、
誰を当たればいいのだろう…。
あ、そうだ、ふみのさんからの御守り…!)