火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第17章 柱合会議と光を継ぐ者
その同じ夜。
ふみのは、禰󠄀豆子の着物を仕上げつつ、
手ぬぐいと包帯を詰めた巾着を作っていた。
以前、杏寿郎が最終選別に向かう際に
渡したものと同じものだ。
何かある時に役立つので、
時間がある時は、少しずつ作っているのだ。
(杏寿郎は…元気かな…。
千寿郎くんも、捻挫は治ったかな…)
普段のちょっとしたことに
杏寿郎との思い出が潜んでいる。
その思い出たちに、
杏寿郎とのときめきが、
いとも簡単に呼び起こされてしまう。
ふみのの心はほんのりと灯され、
元の色に染まっていくようだった。
それらを振り払うように、
ふみのは背伸びをし、立ち上がって
縁側から満点の星空を見上げた。
あまりの美しい星の瞬きに
ふみのはふうと息をつく。
その時、
一瞬だけ刺すような冷気が
ふみのの肩を掠めた。
(何…っ?!)
ぞわりと悪寒もする。
不穏な雰囲気に辺りを見回すが
鬼の気配は感じない。
(何だろう…疲れているのかな…、
今日はもう休もう…)
ふみのは、
そのまま床に就いた。
とある高く聳える大樹の枝に、
一人の鬼が立っていた。
その口元は微笑しているようにも見える。
紅梅色の髪を持ち、
左右の眼球に“上弦” “参”と刻まれたその鬼は
指に付いた血を舐めとっていた。
「強さは、決して裏切らない…!
俺は、永遠に強いまま、鬼として生きる…!」
その鬼、上弦の参・猗窩座は
更なる強さを狂うように追い求めていた。
真の強さの為に、心を、闘志を燃やし続ける杏寿郎と、
永遠の強さを手に入れる為、
闘魂を漲らせる猗窩座との出会いが時迫る。
そして、光の呼吸も、
徐々にその姿を現していく─────