火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第17章 柱合会議と光を継ぐ者
「…ふみのさんは、目の前の鬼を倒し、
蓮を守り抜いたんだ。もう十分に頑張った。
…本当に、ありがとう」
「……っ」
ふみのはそれ以上、
言葉が出てこなかった。
ゐとがふみのに近付き、
その涙を拭ってくれた。
「きっと蓮ちゃんも
ふみのさんの柱への昇格を
心から喜んでくれていますよ。
…どうかこの先も
無理だけはしないでくださいね」
「ゐとさん…っ」
「ああ、あと…、
これを…お返しするのが
すっかり遅くなってしまって…。
ふみのさんの大切なものなのに、
遅くなってごめんなさい」
ゐとが手提げの籠から取り出したのは
ふみのがいつも身につけていた
杏寿郎から貰った羽織だった。
「蓮ちゃん、
この羽織を握りしめるようにして眠っていたわ。
蓮ちゃんはふみのさんが
本当に大好きだったから…。
…本当に、ありがとう。ふみのさん」
ふみのはゐに抱きついて泣いた。
ゐとはふみのが泣き止むまで
ずっと抱きしめてくれていた。
欣善も義勇も、気付かれないように
その潤んだ瞳を隠すように空を見上げた。
木々の合間から溢れる日差しは
四人を優しく照らした。
ふみのはその羽織を再び纏い、
日々の任務に赴いた。
薫子は相変わらず厳しい言い草ではあったが、
単独で任務に当たるふみのの為に、
本部や他の柱に鬼の進捗について聞き込みをしたり、
警備地区の事前調査など、懸命にふみのを支えた。
そしてふみのは任務の合間に、
禰󠄀豆子の着物を直した。
数日後、着物を直し終わったことを
杲を通して炭治郎に伝えてもらうと
明後日には蝶屋敷を出れそうなので
その時に屋敷に取りに行くと返事が来た。
その日は非番なので屋敷にいるようにすると
ふみのは炭治郎に伝達を送った。
「ええっ!!
もう次の指令来てるのかよっ!?!?」
蝶屋敷を出る最終夜、
そう嘆いているのは黄色い頭髪の少年、
炭治郎と同期の我妻善逸だった。
「うん、“無限列車”っていう汽車で
数十名の人達が
行方不明になってるらしい…」
「怪我、治ったばかりなのにいぃ〜…。
…辛いことばっかじゃんかよぉ…」