火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第17章 柱合会議と光を継ぐ者
「…私の呼吸のせいで
薫子さんをずっと苦しめていたのね。
本当に、ごめんなさい…」
薫子はふみのの腕を掴み、
ぶんぶんと顔を横に振った。
涙で声が揺れていた。
「違う、んです、そんなこと、ないんです…っ。
…私は、一人苦しんでいる姉に
何もできなかった。
何もしてあげられなかった。
きっと毎日、怯えながら刀を振っていたと思うんです。
これ以上隊士の命を落とさないようにって。
…とても真面目な人だから、
どんどん自分を追い詰めて…っ。
自分にできることをやりたいのに、
…でもどうしていいか分からなくて…っ」
「ずっと…心配してくれていたのよね。
ありがとう。薫子さん」
ふみのはそっと薫子の頭を撫でた。
「私…ごめんなさい…っ。
ふみの様に冷たい態度ばかりとって…っ」
「ううん…。
私が出来が悪いばっかりに、
薫子さんに沢山の心労をかけて、
本当にごめんなさい。
私に付くようになって…、
毎日辛かったでしょう…?」
その言葉に薫子は顔を上げた。
涙で濡れるその頬をふみのは
両手で包んだ。
「…いいえ…っ。
…守りたいと、思いました。
私は姉のことを守ることはできなかった。
…でも、ふみの様のことは
絶対に守ろうと心に誓いました。
必ず、守り抜こうと…!」
「薫子さん…っ」
ふみのは薫子を力強く抱きしめた。
「本当にありがとう。
傍にいてくれてありがとう…っ」
「ふみの様…っ」
薫子もふみのの背中に手を回し、
その腕の中で泣いた。
寝る前、ふみのは
光の呼吸のことを考えていた。
翠子の命を奪ったのは
やはり呼吸の呪いによるものなのか。
己に絶望し酷く苦しむその姿を憐れみ、殺めたのか。
耀哉が言っていたように、
失望が呪いを呼び起こしているのだろうか。
しかし薫子が見た翠子の最期は
苦しんでいたことを微塵も感じさせないような
とても穏やかな表情だったという。
光の呼吸は、その使い手に
何をさせようとしているのか。
鬼を斬ることだけを
目的にはしていないのか。