火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第17章 柱合会議と光を継ぐ者
日は沈み、辺りはすっかり暗くなっていた。
薫子はさっと向きを変えて門の方へと歩き出した。
「薫子さん!お待ちください!
もう暗いので、
今日は私の屋敷に泊まってください!」
ふみのは薫子を慌てて引き止めた。
突然の提案に薫子は酷く驚いていた。
「何を…仰っているのですか?
住み込みでもない隠が柱の屋敷に泊まるなど
ご法度です。私は帰ります」
「駄目です!もし何かあったら、大変ですもの!
これは私の責任ですので、どうか今日だけは…っ」
「いいえ、結構です。失礼します」
薫子は冷たく言い放ち、
急足で屋敷を出ようとする。
ふみのは追いかけ、その手首を掴んだ。
「待って薫子さん!
……上官である私の指示と言ったら…?」
薫子はむっと睨むように
ふみのに振り返った。
「…光柱様、卑怯ですよ。
こんな時にその権限をお使いになるなんて…っ」
ふみのは、それを物ともせずに微笑み返した。
「さ、屋敷に入りましょう?」
「……」
薫子はふみのに言われるがまま、
手を引かれ、屋敷の中に入った。
ふみのは久しぶりに人へ料理を振舞った。
薫子はふみのの手を煩わせるからと
食事は一人でどうにかすると断っていたが、
ふみのの作った料理から立ち込める香りに
薫子の腹が鳴った。
薫子は頂きますと手を合わせると
無言のまま黙々とふみのの料理を食べた。
念の為、口に合うかと確認すると、
美味しいですとその箸を止めることなく食べ続けた。
(よっぽどお腹が空いていたのかしら…)
ふみのは薫子の顔をその時、初めて見た。
その素顔は意外と幼く見えた。
まだ十五か十六といったところだろうか。
栗色の瞳と同色の波打つ髪が肩まで伸びていた。
普段があまりにもしっかりしているので
ふみのは自分よりも年上かと思っていた。
「…薫子さんは、
隠になってどのくらいになるのですか?」
ふみのは恐る恐る薫子に訊ねる。
「…二年と少しです」
「そうなんですね。
すごくしっかりされているので
もう随分と長いこと…」
「光柱様」
薫子がふみのの声を遮った。
「? はい…っ」
「…どのように、
その呼吸を習得されたのですか」