火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第17章 柱合会議と光を継ぐ者
気付かれなくて良かったとふみのは安堵し、
(しっかり気付かれているが)
失礼しますとふみのは部屋を出ようとすると
しのぶが声をかけた。
「ふみのさん、
この度は柱への就任、おめでとうございます。
…いつでも、私達を頼ってくださいね」
優しく微笑んでくれるしのぶの笑顔に
ふみのは目頭が熱くなる。
「はい…っ、
しのぶさん、いつもありがとうございます」
耀哉にも、そして他の柱も、
自分のことをあたたかく迎えてくれたことが
ふみのは嬉しかった。
鬼殺隊の一員として、柱として貢献し、
より多くの鬼を斬り、
人々を守りたいと思う気持ちが
ふみのの中でより一層増していく。
しのぶに礼を伝えて、
ふみのは煉獄家に向かった。
(…どうやって渡そう…)
ふみのは夕暮れに染まる煉獄家の門の前に
立ち尽くしていた。
(湿布を渡すだけなのに…、
…なんて言えば…っ)
散々迷惑を掛けてしまった申し訳なさで
ふみのはその一歩が踏み出せなかった。
すると、庭の方から人の声が聞こえてきた。
「…大丈夫ですよ!
さっき兄上に手当てをしてもらったので…っ。
ゆっくりなら歩けるようになりましたし…!」
「いや、もう少し胡蝶から湿布を貰ってくる。
腫れが引かなければ、明日診てもらおう」
その足音は門へと近づいてくる。
(!! どうしようっ、
杏寿郎がこっちに来る…っ)
ふみのは咄嗟に湿布の入った包みを
門の前に置き、走って近くの道の角を曲がった。
角からそっと門の方を覗くと
すぐそこに杏寿郎が立っていた。
(…?…これは…?)
杏寿郎は門の前の包みに気付いた。
拾い上げ、中を見ると数枚の湿布が入っていた。
(…胡蝶のところの包み袋…?
何故、こんなところに湿布が…)
千寿郎の怪我のことは柱合会議の際に
確かにその場の柱達に話したが、
しのぶが持ってきたとしたら
直接声をかけて手渡してくれるだろうと
杏寿郎は思い巡らした。
杏寿郎は、あの時何か言いかけていた
ふみののことを、はっと思い出した。
(まさか、ふみのが…!?)
「ふみの…っ!?」
杏寿郎はふみのを探した。
だが、その姿も返事もなかった。