火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第17章 柱合会議と光を継ぐ者
それでも実弥はぎりぎりと歯を軋ませ、
鬼は生かしておけないと憤慨した。
そして日輪刀で自らの腕を切りつけた。
その腕からは大量の血が滴る。
「お館様…!証明しますよ俺が!
鬼という物の醜さを!!」
そして実弥は血が滴る自身の腕を
鬼の禰󠄀豆子が入っている木箱の真上へと向けた。
ぼたぼたと木箱が実弥の血で赤く染まっていく。
禰󠄀豆子の爪らしき音が
カリカリと木箱から鳴った。
「不死川。日なたでは駄目だ。
日陰に行かねば鬼は出て来ない」
小芭内の助言に、実弥は猛威を奮い立たせ
耀哉のいる部屋に土足で舞い込んだ。
「お館様、失礼、仕る」
実弥は容赦無く、禰󠄀豆子の入った木箱を
日輪刀で刺し通した。
木箱からは痛みを堪えたような
禰󠄀豆子の声が聞こえた。
「禰󠄀豆子っ!!!」
炭治郎が動こうとするも
松の木から飛び降りた小芭内に差し押さえられた。
その間も、実弥は木箱へ日輪刀を刺し続けた。
(いくら鬼でも、あそこまで…っ)
兄弟がいたふみのからは
炭治郎の気持ちが痛いほど理解できた。
(もし自分もその立場にあったら
炭治郎くんと同じことをする…っ)
鬼になったとはいえ、
妹であることは変わらないのだ。
傷はいずれ回復するとはいえども
その惨さに胸が締め付けられた。
実弥は木箱の蓋をこじ開けると、
桃色の麻の葉模様の着物を着た
鬼の少女・禰󠄀豆子が姿を現した。
口元には竹を咥えているも、
その息はかなり上がっている。
実弥の血から目を背けようと
必死に己と戦っているようだった。
しかし実弥は敢えてその血に染まる腕を
禰󠄀豆子の前に差し出した。
禰󠄀豆子はただただ、必死に堪えていた。
「禰󠄀豆子!!!」
炭治郎が小芭内を振り払い、
縁側から禰󠄀豆子を呼び止めた。
その声に禰󠄀豆子は炭治郎を横目で見ると、
実弥の腕から、ぶんっと勢いよく顔を逸らしたのだ。
予想外のことに実弥は思わず言葉を失う。
禰󠄀豆子の行動にその場にいた皆が驚いた。
鬼が人の血を拒むなど、前代未聞だった。
「ではこれで、禰󠄀豆子が
人を襲わないことの証明ができたね」
ふみのもほっと胸を撫で下ろした。
(良かった…。
でもあの子の着物、血で…)
禰󠄀豆子は木箱に戻ると顔だけ出して
実弥に向かい、ふんふんと威嚇していた。