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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第16章 霞ゆく光、産屋敷家との出会い




そして数日経ったある日、
藤の家にいたふみのの元に隠が訪れ、
耀哉から新しい住まいを用意してあるとの言付けを受けた。

ふみのは丁重に断ったが、
耀哉からの申し付けでもあるので、
是非その屋敷を使って欲しいと隠に頭を下げられた。


藤の家の女将もふみのの柱への昇格を
心から喜んでくれた。
まるで母のように、いつも気にかけてくれて
ふみののことを大層可愛がってくれていた。

新しい屋敷に行っても、
いつでも立ち寄って欲しいと
泣きながら見送ってくれた。

ふみのは藤の家の女将に何度も礼を伝え、
その屋敷へと拠点を移した。






一人で住むには広すぎる屋敷だったが、
ふみのは自分の新しい居場所ができたことに
ほっとしていた。
耀哉の配慮には頭が上がらない。

落ち着いた佇まいに、
何処となく幼少期の屋敷を思い起こさせる。


「光柱様。
 私が貴方様に専属で遣える隠でございます。
 必要なものがあれば何なりと」

庭先にいる隠は、縁側に座るふみのの前に跪く。
隠からは目元しか見えないが
声からして女性のようだ。

「…一ノ宮で構いませんので、
 どうかそう呼ぶのは…」

「いいえ、貴方様はもう柱であられます。
 …何かあればお呼び下さい」

「…はい」

隠は冷ややかに言い放ち、
腑に落ちないようなふみのの表情を無視して、
その場から去った。


ふみのはがらんとした和室を見渡す。

(……そうだ、着物も何も、
 置きっぱなしだった…)

蝶屋敷を出てすぐに藤の家に向かったので
身の回りものは煉獄家に置き去りにしていることを
ふみのは思い出した。

藤の家では衣食住ともに
身の回りの世話をしてくれていたので
生活していく上で困ることはなかったのだ。

でももう此処に住むとなれば
私物を移動させなければ。

だが、煉獄家を避けるようにしてきて、
何も恩を返さずに、自分勝手に過ごしてきた数ヶ月。

そんな自分がのうのうと
煉獄家の敷居を跨ぐことなど許されるのか。

罪悪感を感じつつも、
ふみのは煉獄家に向かった。





昼を過ぎた頃、
ふみのは煉獄家に到着した。

(杏寿郎は…、千寿郎くんは、いるのかな…)

どんな顔をして二人に会えばいいのだろう。

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