火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第16章 霞ゆく光、産屋敷家との出会い
「…今日ふみのを呼んだのは、
私から一つ、ふみのに頼みがあってね。
それを聞いてもらいたくて、
此処まで来てもらったんだ」
「…頼み…ですか?」
「ふみのに是非、
柱として、この鬼殺隊を
支えて貰いたいと思っているんだ」
(……!?
私が柱に……?!)
突然の耀哉の話に
ふみのは戸惑いを隠せない。
「他の柱の皆とも意見が一致してね。
この数ヶ月、ふみのが斬った鬼の頸は
既に五十体を上回っている。
その実力を生かして貰いたい。
…そしてふみのの光の呼吸について、
私も過去の記録を辿り、
情報を探ってみたんだ」
「…っ!」
「確かに解明されていないことが多く、
私も全てを網羅できたわけじゃない。
…呪いの存在も、否めない。
けれど、その呪いは決して悪い意味では
働かないものだと、私は思うんだ」
「…ですが…っ。
私は、自分の呼吸でさえ駆使できず、
同期の友を…蓮を、亡くしました。
それは呪いの可能性も十分に考えられます…」
周りの人へ危害を与え兼ねない自分が
柱になるなど、ふみのは考えられなかった。
視野が狭張る耀哉の瞳に
動揺したふみのが映る。
耀哉はやさしく包み込むように
ふみのを見つめた。
「…私は、光の呼吸が
蓮の命を奪ったとは思っていないよ。
勿論、ふみのの所為だとも思ってはいない」
その言葉に、
ふみのの頬に、静かに涙が頬を伝う。
「…これは私の憶測に
なってしまうのだが…。
呪いは、闘志に燃え、人を護り、
恐怖に立ち向かう者には働かない。
その逆の、望みを失った時に…、
この呪いは、その本性を
現すのではないかと思ったんだ」
「望みを失う…時…」
「うん。ふみのも蓮も
下弦の鬼と戦ったあの瞬間、
お互いを助け合い、必死に守ろうとした。
光の呼吸は、その心をもった隊士の命を
奪ったりはしないと、私は思う」
二人の間に少しの沈黙が流れる。
(…確かにあの時、蓮を救うことしか
考えていなかった…。
…私もそう思いたいけれど、
でも、もし、万が一のことがあったら…っ)
不安げな表情のふみのに
耀哉はやさしく声をかけた。