火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第16章 霞ゆく光、産屋敷家との出会い
(お館様からの直々のお話なんて…。
全く想像がつかない…)
ふみのは緊張のあまり
その夜はなかなか寝付けなかった。
いつもよりも早めに起床し、縁側を眺めると、
庭にいた杲がふみのの肩に乗ってきた。
「ふみの、キット大丈夫!」
「うん…っ!
杲さん、いつもありがとう」
ふみのは隊服を身につけ、
朝餉を済ませ、産屋敷邸へと向かった。
ふみのが藤の家を出るとすぐに
耀哉の鎹鴉と出会した。
産屋敷邸の場所は極秘なため、
途中から隠により目隠しをされ、誘導された。
目隠しを取ると
広大な庭と大きな屋敷が広がっていた。
美しく整えられた庭を流れる
川のせせらぎの音が辺りに響き渡る。
鎹鴉より、此処で待つようにと言われ、
暫く立っていると、最終選別の際に
説明をしてくれた少女が一人、
こちらに向かって歩いてきた。
「一ノ宮ふみの様ですね。
お久しぶりでございます。
お待ちしておりました。
どうぞこちらへ」
その少女の後ろをふみのは歩き、
屋敷の中へ入ると、大きな和室に通された。
「間もなく、お館様が参ります。
少々お待ちくださいませ」
少女は静かに襖を閉めて、
ぱたぱたと足音が遠のいていった。
(お館様って、どんな方なのかしら…)
庭からの獅子脅しの音が和室に広がる。
ふみのは正座をして耀哉を待った。
すると、襖がゆっくりと開いた。
そこへ先程の少女二人に連れられて
ふみのより少し離れたところに
耀哉はゆっくりと腰を下ろした。
耀哉の額から目元にかけて、大きく痣が広がる。
瞳は曇っているようにも見えるが
目の前のふみのを見据えていた。
ふみのはその耀哉の顔の痣に
目を見開く。
(…お館様って
ご病気を患っていらっしゃるの…っ?)
ふみのは、はっと我に返ると
手をつき、頭を深く下げた。
「君が、…ふみのだね。
今日は来てくれてありがとう。
急に声をかけて、驚かせてしまったね」
「い、いえ…っ。
お初にお目にかかります。
私、一ノ宮ふみのと申します…」
ふわりとやわらかく、あたたかい耀哉の声色に
ふみのの緊張は徐々に解れていった。