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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第16章 霞ゆく光、産屋敷家との出会い




柔らかくあたたかいぬくもりに
ふみのは笑みが溢れた。
幼い頃のよしのと健一郎を思い出す。

「…元気に、大きくなってね」

ふみのの微笑みを見て
赤子はけたけたと笑い声を上げた。


自分の存在が、この呼吸が、
人々の命を守ることができた。

その安堵の気持ちがふみのの心を
少しずつ慰めていった。

ふみのは、その親子に別れを告げ、
その場を立ち去った。


藤の家に戻り、部屋に入ると
閉められた障子の向こうに一羽の鳥の影が映った。

「…杲さん?」

駆け寄って障子を開けると
そこには初めて見る鎹鴉がいた。

「…何方の、鎹鴉かしら…」

藤色の房を巻き付けた鎹鴉は
なめらかな口調でふみのに話しかけた。

「貴方が、一ノ宮ふみのさんですね」

「…!…はい、そうですが…」

「初めまして、
 吾輩は、産屋敷耀哉の使いの者です」

「!! お館様の…っ!」

ふみのは咄嗟に正座をし、
手をつき頭を下げた。

「そんなそんな、ふみのさん、
 畏まる必要はありません。
 どうか、楽にして話しを聞いていただければ」

「…は、はい…」

ふみのは顔を上げるが、
その状況に頭が追いつかない。

ふみのは耀哉と
対面したことはまだ一度もなかった。
勿論、鎹鴉を通じてのやり取りも一切ない。

こんな自分に耀哉からの伝達など
ふみのは見当もつかなかった。

「ふみのさんへどうしても会いたいと
 耀哉が申しているのです」

「…!! 私と…?!」

「はい、明日にでも産屋敷邸に
 お越し頂けますか?」

「…こんな私に、お話とは一体…っ」

「それは産屋敷邸にて
 耀哉から直接お話させて頂きます。
 …どうしても、会って話しをしたいとのことで」

ふみのは何か隊律違反を犯していたのかと
思い巡らしていたが、そうであればもっと早い段階で
注意喚起があるだろうと自身で心を宥めた。

「…承知致しました。
 明日、お伺いさせて頂きます」

「はい、お待ちしておりますね」

鎹鴉は既に高く昇った日の方向へと
飛んでいった。

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