火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第3章 生き残った一人の少女
それから数日が経った。
ふみのは声が出せなかったが、
体の具合は良くなってきた。
瑠火は、ふみのさんと呼んでくれた。
なぜ自分の名前を知っているのか分からなかったが、
健蔵と以前何かで関わりがあったのではと
ふみのはなんとなく思っていた。
瑠火はふみのに必要以上に色々聞かず、
食べやすい食事を作ってくれたり、
身の回りの世話をしてくれた。
起き上がって歩くこともできるようになると、
目の前の縁側に座り、外を眺めた。
縁側の草木が揺れるのを見ているのが心地よかった。
とんとんと襖が鳴り、
瑠火が顔を覗かせる。
「ふみのさん、今から買い物に出かけます。
一緒に行きますか?」
大分動けるようになってきたので、
ふみのはこくこくと頷き、
瑠火と一緒に玄関に向かう。
玄関を出ると、大きな庭が見えた。
庭には、赤色と黄色に靡く髪を持つ少年と
その少年にそっくりな一回り小さい少年が
素振りの練習をしていた。
「杏寿郎、千寿郎。
今からふみのさんと
買い物に出かけてきます。留守番を頼みますね」
「はい!母上!
ふみのさん!お気をつけて!!」
その大きい声にふみのはびくりとした。
(なんて元気な子なんだろう…。
瑠火様の御子息かしら…)
瑠火の影に隠れるように、
ふみのはその少年達を見る。
さ、行きましょうと、
ふみのの手をとって瑠火は歩き始めた。
「驚かせてしまい、ごめんなさい。
さっき庭にいたのは
長男の杏寿郎と次男の千寿郎です。
元気なのが取り柄なのですが…、
元気過ぎて私も手に負えないときがあります」
少し困ったように瑠火は笑った。
(ああ、瑠火様もかあさまと同じ目をしている)
愛する我が子を見る瞳は、本当に美しい。
(きっと杏寿郎さんも千寿郎さんも
たくさんの愛情を受けているんだろうな)
そんなことを思いながら、瑠火と夕飯の買い出しをした。