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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第15章 下弦の壱、そよぐ勿忘草 ˖☽°.*





緑草の擦れ合う音が
波のように聴こえる。

ふみのはゆっくりと目を開いた。

そこには青々とした草原が
果てしなく広がっていた。

あたたかな日差しが降り注ぎ
たわやかに吹く風は
その緑を撫でるように
たなびいていく。


(…ここは……?)


ふみの以外
そこには誰もいなかった。


清々しく、
夢よりも心地良い場所だった。





ふとふみのの目の前を
桜色の花弁が舞う。


手を差し出すと、
ふみのの掌に
一枚の花弁がふわりと乗った。


(この花弁…っ)


蓮(はす)の花弁だった。


辺りを見渡すと
少し離れたところに、蓮が立っていた。


「蓮…っ!!」


蓮は哀しそうに
そっと笑みを浮かべる。


ふみのの目に、涙が溢れる。


どうしても蓮に謝りたい。
自分の所為で蓮の命を奪ってしまったことを。


ふみのは蓮の元へ走ろうとするも
足が動かず、前に進めない。

(どうして…何で…っ?)

その場で、もがきながら
ふみのは蓮を見る。


すると蓮の、凛とした声が
ふみのの体に響き渡った。


『 ごめんね… 』


「…っ、何で…何で蓮が謝るの…?!
 私の、所為なのに…っ」



そして
蓮はゆっくりと微笑んだ。



『 ふみの、ありがとう 』



「…っ!!」


すると蓮の後ろから
一人の男性が現れた。

蓮の兄、一彰だった。

一彰はふみのを見ると
優しく微笑み、深々と頭を下げた。


「…蓮の…お兄様…?」


一彰が蓮の肩に手を乗せ、
蓮は目配せを交わす。


蓮は再びふみのを見つめると
穏やかに目を細めた。

蓮の口元が僅かに動く。



『 ───
  ────、─────… 』



「何…?何て言ってるの…?
 蓮、聞こえないよ…っ!!」


そのまま蓮と一彰は
眩い光に包まれ、姿を消した。


「待って…!!
 蓮、行かないで…っ!!
 お願い…っ!!」


ふみのは
その草原に一人取り残された。



蓮、行かないで


蓮と話したいことが
まだ沢山あるのに


お願い


どうか戻ってきて


行かないで













「…蓮、行か ないで…っ」

ふみのは泣きながら
目を覚ました。

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